第91話

ふん〜ふん〜


鼻歌を歌いながら、バスの窓から景色を眺める。紅葉が綺麗で、もう秋だな〜って季節の変わりを見ると時間の経過を感じる。

芽衣と出会ってもう半年、あっという間だ。あと半年後には私達は2年生なる。


来年はどうな風に芽衣と過ごしているかな。多分、変わらないとは思うけど芽衣とずっと一緒に入れたらそれでいい。

隣の席でワクワクした顔をしながら景色を見る芽衣を見るだけで幸せだ。



「席替わろうか?」


「大丈夫」


「芽衣は小さいから…」


「もう!」


「ごめんって、、」



つい、ポロリと余計な一言を言ってしまう。私はただ芽衣が景色を見やすい様にって思ったのに…言葉のチョイスがダメみたい。

なかなか難しいよ、善意が上手くいかない。


今日から芽衣と3日間ずっと一緒にいられるのに、いきなり喧嘩はしたくないから(怒られたくない)気をつけないと。

せっかくの初めての修学旅行が台無しになってしまう。



「景色が綺麗だね〜」


「うん」


「芽衣…本当に見づらくない?」


「全然」



さっきから芽衣の体勢が気になって仕方ない。私に寄りかかるのはいいけど、私を抱きしめる様に景色を見るから私の体が窓に追いやられてキツい。

それに、お胸がね…私の腕に当たってるの。この前のことがあったからさ、、どうしても意識しちゃうのに、これは辛すぎる。


芽衣…わざとじゃないよね。わざと私の腕にお胸を当てて面白がってないよね?

それとも本当に無意識なのか!?もうしそうだったら小悪魔レベルが高すぎる!強烈すぎて、仏心なんてとっくに捨てている。



「芽衣…少し離れて」


「やだ」


「(くそ…)わざとでしょ」


「そうだよ」


「(やっぱりだ!)この前の仕返し?」


「うん」



笑顔で「うん」って言ったよ。芽衣ちゃん、いくらなんでも酷い。私は常に無意識だよ、全くもって1ミリたりとも悪気ないよ(だから怒られるんだけど)

もう、私は芽衣のお胸の柔らかさは知っている。だからこそ辛くて…地獄すぎる。



「もういいでしょ…(許して下さい…)」


「そうだね」


「あっ、もうすぐ着くね〜(良かったー)」


「うん、早く観光したいな」


「あの、芽衣…手、、(恋人繋ぎされたんだけど…)」


「お互い迷子にならないようにしないとね」



もしそうだったとしても、まだ手を繋ぐのは早くない。バスの中だし、意図的だから嬉しい!恥ずかしい!遊ばれて悔しい!という気持ちがぐるぐると回る。


私はかなりの紳士だと思う。我慢して我慢してとにかく我慢している。

それを弄ぶのが芽衣で自分自身を褒めてあげたい。聖母マリア様みたいな心を持っていると思う。

誕生日が来たら聖母マリア様の心は無くなるけど…今はめちゃくちゃ頑張ってるよ。



「芽衣は意地悪だ…」


「水希にだけだよ」


「何でー、、」


「好きだから」


「えっ…///へへへ」



顔が最高にニヤケていると思う。芽衣の「好きだから」って言葉はヤバい。

だって愛の告白だ。私も芽衣に好き!って叫びたくて興奮してしまう。



「芽衣、楽しもうね」


「うん」



今日は修学旅行1日目。やりたい事、行きたい所が沢山あり芽衣と楽しい思い出をいっぱい作らなきゃいけない。

ワクワクする。芽衣の手を握り返し、少しだけ引き寄せると肩に頭を置いてくれた。幸せだ、心がポカポカする。


今日のスケジュールは新幹線で京都に着きバスで移動。そして、観光地に着いたら一度先生達の話を聞いてそれぞれ班で観光巡り。

勿論、時間厳守で集合場所まで戻ってこないといけない。特に私は生徒会のメンバーだから守らないとお姉ちゃんに怒られる。


京都の秋は紅葉が綺麗だから行きたい所が沢山ある。嵐山、金閣・銀閣、東大寺など名所が多いし和菓子が楽しみで仕方ない。

麩餅食べたい!抹茶を飲みたいし、お漬物も買いたい。京都は食べ物も美味しそうな物が多く食べたいものが多すぎる。










「はーい。みんな、一列に並んで」


「芽衣、後でね」


「うん」



大きな広場で生徒がクラスの出席番号順に並び、一列に並び始めた。先生の話が終わったらやっと自由行動になる。

中学の修学旅行ではこんな風に自由行動はなかったからワクワクが止まらないよ。友達と好きな所に行けるって最高だ。



「あっ、水希」


「ひかる?髪型がいつもと違うから、一瞬分からなかった」


「修学旅行だから、頑張ってみた」


「似合ってるよ、可愛い」


「だから、それ禁止」


「そうだった…」



私は口が軽いみたいだ。つい「可愛い」とか簡単に言ってしまう。でも、本当のことを言ってるだけだから仕方がない。

ひかるの髪型似合ってるし…うん、、一応気をつけよう。



「水希は、もう行く所決めてるの?」


「大体ね」


「私ね、絶対に行きたい所あるんだ」


「どこ?」


「伏見稲荷大社。千本鳥居が有名で朱塗りの鳥居がズラリと並んでいるんだって」


「へぇ、いいな。私も行きたい」


「場所教えようか?」


「うん!」



ひかるに地図を見せて貰い、ここに行くにはバスで行った方がいいよって教えて貰った。

あと、お土産の話などして会話を楽しんでいるとヒソヒソと声が聞こえてくる。


「やっぱり、あの2人…」


うーん、よく聞こえなかった。ただ、ヒソヒソ話だから当たり前だけどこっちを見ながら話されるといい気持ちはしない。

もしかして、ごんちゃんが言ってたやつかな。私とひかるが付き合っているという…マジで困る噂のやつ。


どこまで噂は広がってるいるのだろう。勝手に誰と誰が付き合ってるとかやめて欲しい。

噂をされた本人は迷惑でしかないし、否定しようがない。自分達から付き合ってません!なんて言えるはずない。

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