第90話

私はごんちゃんにひかると私の話を聞いて、部活のとき芽衣に話しかけるのが怖くなった。別に普通に話せば問題はない。でも、ちょっとしたことで噂の種になる。

窮屈すぎる。人の目がこんなに自由を奪うなんて、監視されてる気分になる。


あと、何かに似てる感覚もある。なんだろ…あっ!おもちゃだ。流行のおもちゃ。

飽きたら簡単に捨てる癖に世間が注目してる時だけ盛り上がる。それと一緒だ。

だったら、早く飽きて欲しい。私はみんなのおもちゃじゃないし、人間なんだよ。



「水希、ボーッとしてどうしたの?」


「えっ?あっ、ひかる…何でもないよ」


「具合でも悪いの?」


「違うよ」


「でも、顔色悪いよ…」



ひかるとの噂にストレスが溜まってるのかもしれない。それに疲れた。

噂する方は楽しいかもしれないけど、噂される方は疲れる。人の目が気になり、人の目を気にして普通のことでさえ気にしてしまう(ひかるに申し訳ない気持ちになるし)



「水希、少し休憩したら?」


「大丈夫だよ。ひかる、ありがとう」


「そっか、じゃ行くね」



頭を切り替えなきゃいけない。部活にも影響が出ている。来週は修学旅行だし、思いっきり自由を楽しみたい。

芽衣と班も部屋割りも同じだし。ただ…ごんちゃんも一緒だから、ずっとうるさそうだけどそこは目を瞑ってあげよう。



「ひかる、それ持っていくの?私も手伝うよ」


「大丈夫だよ、水希は休憩して」


「だから、大丈夫だって」


「じゃ、半分お願い」



運動部のマネージャーってハードだ。部員のこと考えたり、やることも色々ある。

ずっと裏でサポートしてくれて申し訳ない。だから、少しでも手伝えることがあったら一緒にやりたい。特に芽衣は小さいから大きい物を持ってる時とか心配になる。



「ひかる、マネージャー大変じゃない?」


「大変だけどやりがいはあるよ」


「そっか。でも、無理しちゃダメだよ」


「水希、親みたい」


「私の方が年下なのにー」


「あっ、そうだった。水希は妹になるのか」



みんな私より誕生日が先に来て16歳になっていく。私も来月が誕生日だけど、今はまだ15歳で置いていかれている感があって寂しい。

一つ年齢を重ねてたら高校生って実感するのかな。15歳だとまだ中学生感が抜けない。



「水希の誕生日、お菓子作るね」


「やったー!」


「何がいい?」


「ガトーショコラ!」


「うん、頑張って作る」



チョコレートケーキと言ったらガトーショコラで私が一番好きなチョコレートケーキだ。ひかるの手作りケーキだから楽しみすぎる。

それもそれも、ホールであげるって言ってくれた。半分ずつ食べるから2日間はガトーショコラを楽しめる。



「お腹空いてきたー」


「私もお腹が空いてきちゃった」


「あっ、ひかるのお腹の音がした!」


「違うー!」



ひかるとお腹の音がした・しないで戯れあっていると校舎の窓の近くにいる女の子と目が合った。

確か、あの場所は調理室だったかな。エプロン付けてるからきっとそうだ。


目が合ったと分かると慌てて後ろを向いて奥へ行ってしまった。あの子、誰だっけ?

どこかで見た様な…えっと、、あっ!思い出した。チョコのマドレーヌをくれた子だ。

あの子の作ったマドレーヌは美味しかった。結局、芽衣は食べなかったから私が全部食べれて幸せだったな。



「水希、どうしたの?」


「何でもないよ」


「戻ろうか」


「うん。あっ…待って。じっとして」


「あっ、自分でやるからいいよ」


「ほら、動かないで。結びにくいよ」



ひかるの靴紐が解けていたから私はしゃがんで靴紐を結んだ。もし、ひかるが靴紐踏んで転んだら危ないからだ。

ちゃんと両方の靴を確認して立ち上がるとまたマドレーヌの子と目が合う。


あの子、陸上部に興味があるのかな。それか休憩がてら外を見てるとか。

ひかるが私の視線の方向を向いた瞬間、マドレーヌの子は走って消えて行った。


可愛い子だった。赤のエプロンがよく似合う子で髪も二つ結びして、女の子!って感じの子だ。

この学校は可愛い子多い。私が当てはまらないのが悔しいけど!



「ひかるも可愛いよね」


「えっ///な、、何?」


「この学校って可愛い子多いなって」


「びっくりした…やめてよ///」



私も可愛くなりたかった、もうちょっと鼻が高く目が大きかったら良かったのに。

あとは女子力が一番の難題だ。特に芽衣と付き合い始めて、その、、男側的な立場だから女子力低下を著しく感じる。


見た目を意識して、髪もちゃんとセットしたり可愛い服を着るとかしないと女子力が0になってしまう。

芽衣が可愛いから私も出来るだけ可愛くありたい。何であんな野暮ったい子が芽衣と仲が良いのって思われたくないから。



「水希はどんどんカッコ良くなる」


「えー、どこがー」


「この前の文化交流会のピアノ演奏も凄かったし、いつも水希の色んな一面を見るたび驚くもん」


「そんなことないよー」


「あるよ。優しいし、走ってる姿やピアノを演奏する姿やギャップが凄くて水希は魅力だらけだよ」


「照れるからやめてー///」



恥ずかしい、恥ずかしいよ///。褒められることに慣れてないから(ほぼ、お姉ちゃんやごんちゃんに貶されることばかり)

でも、嬉しくて顔がデレてしまう。褒められるって嬉しい。


私のこの後、さわちんに怒られた。ひかるにデレるなと。ニヤニヤした顔が気持ち悪いとか酷いよ。私に優しいのはひかるぐらいだ(芽衣は小悪魔だから無しってことで)


でも、、ひかるにもあんまり色んな子に可愛いとか言っちゃダメだよと窘められた。

芽衣に怒られるよ…って、、それだけは嫌だ。黒いオーラ半端なく怖いの。

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