第72話

芽衣を後ろから抱きしめ甘えるの幸せだ。部活中は眼鏡を芽衣に預けているから視界がボヤけ、お陰で恥ずかしさが軽減される。

今日は芽衣が素直にじっとしているし甘え放題で嬉しいし、芽衣の香りを感じられる。


芽衣は戸惑ってると思うけど、こんな機会なかなかないから楽しまないと。耳を赤くする芽衣がめちゃくちゃ可愛い。

今日は家でも眼鏡は外して甘えたいな。その方がドキドキが軽減される。



「水希…そろそろ離れて」


「いいじゃん」



前まではいつもこんな風によくじゃれ合っていた。でも、ひかるやさわちんのこともありずっとじゃれ合うのを抑えていた。

だから、今日ぐらいは許して欲しい。芽衣に甘えるの久しぶりなんだ。



「痛っ!」


「芽衣ちゃんから離れなさい」


「お姉ちゃん、力加減!」


「水希が悪いんでしょ、こっちはハラハラドキドキなのよ」


「そうだ!水希が悪い!」


「恭子先輩まで、何で!」



お姉ちゃんと恭子先輩は結託している。2人で私を芽衣から引き離し、お姉ちゃんに無理やりまだ休憩中なのにランニングに連れてかれた。

まだ、5分しか休憩してない。走るにしてもせめてストレッチさせてほしい。



「水希…ほどほどにしなさいよ」


「お姉ちゃん、どういうこと?」


「イチャつくことよ」


「別に…普通だよ」


「芽衣ちゃん、困ってたでしょ!」


「うぅ、分かった…」



芽衣が困っているなら仕方ないけど、もう少しだけ甘えたかった。お姉ちゃんに言われ、甘えるのを我慢するしかなくため息を吐く。



「あっ、お姉ちゃん」


「何?」


「生徒会のファンクラブがあるって知ってる?」


「あー、、まぁね」



お姉ちゃんはファンクラブの存在を知っていた。もしかしたらファンクラブの子に声を掛けられたのかもしれない。

でも、ファンクラブって何するんだろう。芸能人のファンクラブだと何となく分かるけど、ここ普通の女子校だ。


芸能コースがあるわけでもないのに、普通に考えても変だと思う。

出来れば生徒会メンバーを全員そっとして欲しい。私達は普通の高校生でしかない。だから、そっと見守って欲しい。



「何でそんなの作るのかな」


「女子校は男子がいない閉鎖空間だから、同性がアイドル化しちゃうのよ」


「変なのー」


「水希、来年のバレンタインは覚悟しなさい」


「えー、、」


「陸上部では水希が一番ファンが多いから当然よ」


「私のどこがいいの…顔も全てが普通じゃん(ごんちゃんに言われたし!)」



この学校が共学だったら、こんなことにはならないんだろう。でも…もし、この学校が共学で男子がいたら私は芽衣と付き合えてなかったかもしれない。

悩ましい。弊害も多いけど、芽衣と付き合えたからやっぱり女子校で良かった。



「水希、フラフラしちゃダメだからね」


「しないよー」


「あと、あんまり人前で芽衣ちゃんに引っ付くのは辞めなさい」


「えー…」


「人目を気にしないと…特にファンクラブの子達は水希を見てるから」


「あー…うん」



お姉ちゃんが言いたいことは何となく分かる。もし、私が芽衣と付き合っていることがバレたら面倒くさいことになるし、芽衣に何かあったら絶対に嫌だ。

みんな、ちゃんと恋をしたらいいのに。学校にファンクラブを作って応援しても何も得られないよ。



「あっ、そう言えば…私と恭子に変な噂があるのよ」


「何?」


「私と恭子が付き合ってるって」


「ははは、何それ〜」


「はぁ、、何でこんな噂が出たのか…意味分かんない」



きっと、お姉ちゃんと恭子先輩が仲が良いせいだと思う。それか、よくタッグを組んで私を見張ったりプロレス技を掛けてくる罰。

でも、仲良くしてるだけでそんな噂がたつなんて面倒くさい。



「お姉ちゃんはファンがいるから大変だね」


「私、彼氏がいるのに…」


「しばらくしたら落ち着くよね…?」


「多分…落ち着いてもらわないと困るわよ」



まさか、お姉ちゃんも苦労してるなんて思わなかった。生徒会長でもあるし、学校で一番注目されてるからかもしれない。

それにしても、、ふふふ、ははは!お姉ちゃんと恭子先輩がなんて笑ってしまう。


2人とも綺麗なお姉さんタイプだから、目の保養的な感じで周りが勝手に盛り上がってるのかもしれない。

所詮噂だからほっとくしかない。少女漫画だと変に否定した方が面倒くさいことになるパターンが多いし。



「あっ、今日…芽衣ちゃんが泊まりに来るのよね」


「うん」


「そっか…水希、隣の部屋に私が寝ていること忘れちゃダメよ」


「わ、、分かってるよ///!」



最近になって、お姉ちゃんがずっと言っていたことが分かり恥ずかしくなる。

私達は健全なお付き合いだから大丈夫だ。それに仏になると決めてるし、ゆっくり進もうと芽衣に言ったから。

だから、まだキス止まりで、、その、、まだ心構えが出来てない。



「私達はゆっくり進むと決めてるから…」


「水希らしいね」



お姉ちゃんがホッとしたような顔をする。姉としては気になるよね、芽衣と仲が良いし。

どうしよう、急にドキドキしてきた。いつか、、いつか芽衣とそんな関係になると考えると恥ずかしさで叫びたくなる。

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