第70話

朝から窓は開けて空気の入れ替えをした。シーツも新しいのに変えた。お部屋の掃除は昨日の夜にやった。私は朝からフル回転で動いている。



「水希ー!遅刻するわよー!!!」



嘘でしょ!朝5時に起きて今日の為に色々やっていたら学校に行く時間になった。

私の格好はまだパジャマで、朝ご飯も食べてないしコンタクトもしてない。

あと5分で出ないと遅刻する。もっと前に声を掛けてほしかった。お母さんがせめて10分前に声掛けてくれたら余裕があったのに。

まずは制服を着て、うわぁ、、髪が爆発している。最悪だ、寝癖を直すだけで時間が掛かる。



はぁはぁ…ギリギリに着くバスに乗り、バス停から走って何とか間に合った。でも、朝ご飯を食べれずコンタクトも付けれなかった。

お腹が空いた、せめてお菓子を持ってこれたら学校で食べるのに慌てていたからそんな余裕もなかった。



「あれ?水希、今日は眼鏡なの?」


「ごーんちゃん、遅刻しそうでコンタクト付ける余裕なかった」


「へー。眼鏡、似合うよ」


「あー…コンタクト、、忘れた」



学校でコンタクトを付けようと思っていたのに、肝心のコンタクトを忘れた。

今日の部活がやりにくい。汗をかいたとき眼鏡があると面倒くさいから嫌なのに。



「水希、コンタクトないの…?」


「忘れちゃった、、」


「バカ…」



なぜか芽衣が拗ねている。小声で「誰にも見せたくなかった…」って私の眼鏡のことを言ってるのかな?

今まで学校では眼鏡を掛けて登校したことがない。さっき、ごんちゃんに眼鏡が似合っているって言われたしそんなに似合うのかな。



「水希、時々眼鏡を掛けて来たら?イメチェン的な感じでいいよ」


「ダメ!」


「えっ…芽衣どうしたの?」


「ほら、部活しにくいから…」


「そっか、陸上部だと眼鏡は邪魔だよね」



ごんちゃんと芽衣のやりとりを聞いてニヤけてしまう。芽衣の焼きもちが可愛い、愛情を感じてめちゃくちゃ嬉しい。

でも、私が眼鏡を掛けてようが問題ないよ。ごく普通の黒の眼鏡を掛けてるだけだし、見た目なんて変わらない。

でも、芽衣を揶揄うチャンスかも。楽しくなってきた。



「芽衣。私、眼鏡がそんなに似合う?」


「ムカつく…」



揶揄ったら芽衣に眼鏡を取られた!眼鏡ないと授業を受けれないから返して…目が悪いから芽衣の顔もハッキリ見えないよ。

芽衣を揶揄うんじゃなかった、本気で怒っているし机の下で脚を蹴られて痛い…。



「痛っ、、芽衣ー…ごめんって」


「知らない」


「眼鏡、返してー、、見えないよー」



芽衣を怒らせると大変だ…今度から気をつけないと今日よりも痛い制裁を受けることになりそうで怖い。

でも、渋々返してくれた眼鏡をはめ、拗ねている芽衣にごめんの気持ちで手を握ると握り返してくれたからもう大丈夫かな。


拗ねてても、素直に愛情を返してくれるところが嬉しい。少し照れるけど、もう前みたいなことにはなりたくないし頑張らないと。

ただ、私の指で遊ばないでほしい…無理やり指を広げようとするから地味に痛い。



「あっ、そう言えばこの前の手紙の主は分かった?」


「分からないよ…名前は書いてなかったし」



ごんちゃん、そのことは忘れて欲しかった。お陰で私の指で遊んでいた芽衣の手の力が強くなり、私の指は潰されるかもしれない。

何で地雷を踏むかな、地雷の被害は私に来るから勘弁して欲しい。



「陸上部を見学してる子かな?」


「分からないって…」


「水希って美人でもめちゃくちゃ可愛いでもないけど、笑っている顔と普段の姿とは違う走っている時のギャップがいいんだろうね」


「ごんちゃん、それって貶してるよね」


「褒めてるじゃん、笑顔がいいって」


「貶して褒めても意味ないから!」



私は美人でもめちゃくちゃ可愛くもないよ。芽衣は可愛いから羨ましい。そんな可愛い芽衣が私の彼女なんだけど///へへへ。



「水希は…可愛いくて、カッコいい」


「ふぇ…?」


「おっ、水希よかったじゃん。芽衣に褒められた」



芽衣ちゃん、こんな所でデレないでほしい…嬉しすぎて抱き締めたくなる。

芽衣が好きって気持ちが加速して抱きしめた後チューしたくて堪らない。

もうすぐ授業が始まるのにこの気持ちの高ぶりはどうしたらいいの、、顔のニヤニヤが止まらなくなる。



「芽衣、ありがとう」


「バカ…」


「あっ!」


「もう、、ごんちゃん、次は何?」


「そう言えば、生徒会のメンバーのファンクラブが出来たみたいだよ」


「はぁ?何それ…」


「非公式でこっそりやってるの。生徒会のメンバーか好きな人が集まる集団みたい」



何それ、、生徒会のファンクラブって意味分からない。私のことも含まれたら嫌だな。

私以外の2年生の先輩は分かる。みんな綺麗な人達ばかりだからだ。だけど、私は綺麗に当てはまらないし人気もない。



「最悪…」


「まぁまぁ、いいじゃん」


「ごんちゃん、どこが!」



私はいつも何かしからに巻き込まれる。疲れるから勘弁して欲しい。目立つのも、注目されるのも嫌いだ。

それに、ファンクラブって言葉のせいで芽衣の顔が怖い。本気で怖いからやめて欲しい。

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