第69話
あんなに大人になるって粋がっていたのに、やっぱり芽衣には敵わない。芽衣が急に甘えてくるようになり、甘えん坊な芽衣に私の心臓がいくつあっても足りない。
学校では芽衣から抱きつかれることが増え、私はいつもシドロモドロになる。私の膝の上に座ってきたり、手をにぎにぎしたりとお陰で体中から汗が吹き出しそうで困っている。
そして、家でも…今日は部活帰りに芽衣の家に遊びにきた。最初は普通に飲み物を飲みながら横並びに座って話していた。
でも…腕を組まれ、頭を肩に置かれながら甘えられる。緊張していると手を繋がれ指を絡められた。急に密着度が高すぎる!
さっきから鼓動がやばいくらいうるさい。甘えてくれるのは嬉しいけど、芽衣の甘え方は両極端過ぎて戸惑ってしまう。
私の言葉に安心したのかな。私がゆっくり進もうって言ったから。
「芽衣…この姿はまずくない?」
「何で?」
「お母さんが入ってきたら…」
「大丈夫だよ。それにノックするし」
そっか、そうなんだね〜ってならないよ!さっきから芽衣の顔が近いし、これはキスして欲しいって意思表示なの?
それとも甘えているだけ?もし、キスしようとして驚かれたら恥ずかしくて死にたくなる。
芽衣はお付き合いの経験があるから慣れてるのかな…でも、最初は芽衣が緊張して逆に距離を取られたからよく分からない。
喉が渇いた、、緊張と体の熱が一気に上がり喉と体が乾いていく。
お茶を飲むため姿勢を変えると密着する部分が減り、やっと体の力を抜けた。
さっきまで緊張して全身に力が無駄に入っていた。このままだと筋肉痛になる。
甘えん坊な芽衣は今も私の手を離してくれない。芽衣とまた想いが通じ合った日、私がずっと手を繋いでくれなくて寂しかったと芽衣に言われた。
もしかしたら繋げなかった日の分を取り戻そうとしてるのかもしれない。
「芽衣、日が暮れてきたしそろそろ帰るね」
「うん…」
一度大きく深呼吸をし、立ち上がったあと制服のヨレなどを整えていると後ろから芽衣に強く抱きつかれる。
突然の抱擁に普段猫背の私が手の指の先までピンッと伸び体が硬直する。
「水希…いつお泊まりする?」
「お、、お泊りは…来週はどうかな?」
「明日じゃダメ?土曜日だし」
明日は流石に早いよ…心の準備と心臓が持たない気がする。普通のお泊まりかもしれないけど私がかなり意識をしている。
芽衣は私の言葉に安心してスキンシップが激し過ぎる。今度は私が芽衣の行動に戸惑い体をフリーズさせる。
「いいけど、、じゃ、芽衣の家・・・」
「水希の家がいい」
「私の家…」
頭からボンっと煙が出そうだ。少女漫画でよくある設定のカップルの初めての行為は彼氏の部屋がいいとかの展開じゃない。
今日、私が芽衣の家に遊びに来ているから交代で芽衣が私の家にお泊まりするんだ。
「水希。明日、楽しみにしてるね」
「うん…」
明日はきっと楽しくお喋りして、いつも通りに寝るだけだと分かっているのに思春期男子みたいな妄想がチラついて叫びたくなる。
私達はまだ付き合って3週間しかたってない。靴箱でキスして以来キスはしてないけどハグなどは沢山した。
それに手を繋いだりカップルとしてのちゃんとラブラブぶりを満喫している。
やっぱり交際は慌てずゆっくりしたほうがいいと思うし、私は恋愛未経験だから急展開はついていけない。
「じ、、じゃ、帰るね」
「水希の体、熱いね」
「ほら、まだ夏の気候だから!」
「私、冷え性だから羨ましい」
私はどうしたらいいの。ハグをした方がいいの?それとも…キスは流石にないか。
さっき、帰るって宣言したのに未だに芽衣に抱きしめられ帰れてない。
芽衣は待ってるのかな。私からの何かしらの行動を待っていて、心の中で鈍感!意気地なし!とか思ってるかもしれない。
何が正解なのか分からない。ハズレた時のことを考えると怖くて行動できないよ。
「水希、下まで送るね」
「・・・うん」
答えに辿り着く前に、問題がスキップされ無かったことにされた。情けない…せめてワンアクションだけでも起こせばよかった。
明日の朝は一応、、シーツを新しいのに変えて(暫く変えてないから!)窓を開けて空気の入れ替えをしよう。
そらから、、何も思いつかない。ただのお泊まりだから別に考えることはないはずだけど色々と考えてしまう。
私は恋愛経験がゼロで全てが一からだ。だから芽衣に敵うはずなく逃げ腰になっている。
積極的に動くと決めたのに、芽衣が後ろに下がったら逃さないと決めたのに言葉と裏腹なことをしてまた芽衣を傷つけてしまう。
絶対それだけは避けたい。もう芽衣の涙は見たくない。だから、逃げたくない。
明日は純粋な心を持つ仏様になると決めた。芽衣と向き合いながら、適度なスキンシップをしながら楽しい一夜にする。
《ゆっくり進もう》を信条に芽衣を大切にするから。キスぐらいは出来ればしたい。
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