第59話
「ひかる…あの、、」
「ごめんなさい…」
「あのね…」
「水希、帰るね」
「えっ、もう遅いからダメだよ!」
「このまま泊まったら、水希が困るでしょ」
「危ないからダメ…」
確かにどうしたらいいのか分からずパニックになっているけど、もう外は暗く送るにしてもこのままひかるを帰したくなかった。
でも、どうしたらいいのかな。ちゃんと伝えないといけないって分かっているけど、泣いているひかるに言えない。
「キス…ごめんね」
「びっくりした…」
「振られるって分かっているから、最後に・・・ごめん、本当にごめんなさい」
「泣かないで…」
「優しくしないで…諦められなくなる」
生まれて初めて告白をされた。告白ってドキドキするものだと思っていたけど、私の今の感情は苦しくて胸が痛い。
勇気を出して気持ちを伝えてくれたひかるを傷つけないようにするにはどうしたらいい?どうやったら泣き止んでくれる?
「ひかる…何で私なの?平凡で取り柄もなくて、、」
「水希はカッコいいよ。走ってる水希を見るたび好きが募っていくもん」
「ありがとう…」
「入学して部活どうしようかなって思っていた時、たまたま水希がグラウンドを走ってる姿を見てね、楽しそうだな〜、私もあんな風に走れたらなって思ったの」
「そうなんだ」
「体育祭の部活対抗リレー見て、水希から目が離せなかった。そして、芽衣ちゃんが羨ましかった」
ひかるが入学当時から私を見ていたなんて知らなかった。時々愚痴を言いながら走っていた私をそんな風に思っていてくれて、カッコいいって…私はそんな人間じゃないのに。
生徒会もお姉ちゃんに言われて嫌々入ったし、子供っぽい私なんてひかるには釣り合わない。ひかるにはきっと良い人が現れる。私なんかより100倍良い人がきっと。
「水希、ちゃんと振って欲しい」
「えっ…」
「ちゃんと振られないと、また水希を困らせちゃう」
「ひかる…」
「芽衣ちゃんと上手くいくと良いね」
「分からないよ…」
「大丈夫だよ、きっと上手くいく…」
「ひかる!無理しなくていいから…だから、これ以上泣かないで」
ずっと泣いているひかるを突き放せない。振ることなんてできるはずない。
分かってる、中途半端な態度が相手に一番失礼だし自分が最低なことをしてるって分かってるけど私には無理だ。
抱きしめちゃいけないって分かっているのに私はひかるを抱きしめた。
私は弱いよ。芽衣に気持ちを伝えるって決めたのに今はそんな気になれなくなっている。
ひかるの気持ちを知っていながら、私は芽衣に告白なんて出来ない。
「水希…好きな人がいるのに、こんなことしちゃダメだよ」
「うん…ごめん」
「お腹空いちゃった」
「あっ、出来てるよ」
ひかるが空気を変えてくれた。ひかるは強い。強くて羨ましい。私も強くなりたいけど、意気地なしで欲張りだ。ひかるを失いたくなくて卑怯なことをしている。
振ることも、付き合うことも出来ず中途半端な態度をとり苦しめている。
最低だよ、私は芽衣が好きだから断らないといけないのに頭によぎってしまった。もし、ひかると付き合ったら楽しそうだなって。
私が芽衣にしたキスは一瞬で、ひかるとのキスは唇の感触がしっかりと感じられ今もドキドキしている。
これがキスなんだって、戸惑いながらも受け入れていた。あの時、ひかるを押し返すことも出来たはずなのに。
これから私とひかるの関係はどうなるのかな。私の中途半端な態度にひかるは困惑するだろうし、ちゃんと自分にとってもひかるにとってもケジメをつけないといけない。
「ほら、行こう。先輩来ちゃうよ」
「うげ…それは嫌だ」
「水希の目、真っ赤だよ」
「ひかるもね」
「先輩に心配されそうだな」
「ひかるを泣かせたなーって叩かれそう」
「私が叩けない分、叩いて欲しいかも」
「酷いなー」
ズルいって分かっている。でも、もう少しだけ時間が欲しい。だって、今日はひかるの誕生日で…私のせいで最悪な誕生日にこれ以上なって欲しくない。
気持ちを整理して、もう一度芽衣に告白するとちゃんと決めたらひかるに気持ちを伝える。また泣かすことになるけど、、ケジメだから許してほしい。
恋って難しい。両思いになれる確率は1/2でYesかNoしかない。絶対に自信があって告白したのに振られる人もいる。振られると思っていたらOKだったっていう人もいる。
恋は最後まで分からない。私の告白はどうなるかな。芽衣は彼氏がいたことあるし、女の私に告白されても困惑するだけだと思う。
私もひかるみたいに強くなりたい。前を向きたい。振られることを恐れたくない。
私は恋でぐちぐちと悩むのが疲れてしまった。早く悩みから解消されたい。
でも、告白して芽衣に気持ち悪いって言われたら嫌だ、、考えただけで、泣きそうだよ。
泣きそうになっているとひかるに手を繋がれて「早く下に行こう」って言われた。
ひかるはいつも私の心に寄り添い、私の心を癒してくれる。もし、ひかると先に出会っていたら私はひかるに惹かれていたかな。
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