第56話
「ひかる、このかき氷美味しいよー」
「美味しいね」
私が頼んだティラミス味のかき氷が美味しい。ひかるは苺のかき氷を頼み美味しそうに食べている。
専門店のかき氷にはフワフワのクリームが乗っており、屋台で食べるかき氷とは違う。
ひかるとずっと行ってみたかったかき氷のお店に来れてよかった。
最初はひかるとケーキを食べる予定だった。でも、暑すぎる太陽に冷たさを求めてかき氷に変更した。人気のあるお店だけど、2人で並びながらどれにするって考えるのも楽しかったし来て良かった。
ひかるは私の体調をずっと気をする。かき氷に変更したのも私のためだ。少しでも涼めるようにと、ひかるの誕生日なのに私に気を使わせて申し訳ないよ。
「水希、ありがとう」
「喜んでくれてよかった」
「最高の誕生日になった」
「本当?良かった〜」
ひかると一緒にいると楽しい。美味しい物を食べ、笑い…最近、心から楽しめてなかった気がする。芽衣といると心が苦しくなり、距離も取ることもできず悩む日々でずっとキツかった。
やっと心の底から笑えている気がする。ひかるは私にとってオアシスだ。一緒にいると落ち着き、いつもの自分でいられる。
芽衣ともこんな風にまた笑い合いたい。全て私のせいだけど、元にと戻れることを夢見る。
芽衣とかき氷屋に行きたいし、お出掛けもしたい。ひかると同じように笑い合いたい。
芽衣も苺が好きだから、苺のかき氷を頼んで、美味しいって喜ぶ顔が見たいよ。
「水希、考えごと?」
「えっ?」
「最近、いつも悩んでいるみたいだから」
「そんなことは」
「芽衣ちゃん?」
「えっ…」
「水希、芽衣ちゃんといるとソワソワしてるから」
ひかるには素直に言った方がいいのかな。最近、胸の奥に閉まっておくのが苦しくて誰かに聞いて欲しかった。ひかるだったら軽蔑な目で見ないと思うし。
でも、怖い。もし、ひかるに気持ち悪いって思われたら…大事な友達を失う。
「話せない?」
「そんなことは…」
「どうしたの?」
「最近、夢を見る…」
「夢?」
「芽衣にキスする夢…」
「そっか…」
怖いよ。自分自身が怖いし、ひかるに嫌われることが怖い。とうとう話してしまった。でも、ちょっとだけスッキリした。
悩むことが苦手な私は誰かに打ち明けて話を聞いて欲しかった。
「芽衣ちゃんのこと好きなの?」
「・・・好きだよ」
「友達として?好きな人として?」
「・・・両方だと思う。多分…」
「多分なの?」
「分からなくて」
芽衣のことは友達として好きだ。大好きだし…でも、友達以上の気持ちを持ってしまっている気がする。恋に近い感情を。
芽衣は女の子なのに…私は同性の女の子を好きになってしまったのかな。そんなの報われない恋だよ、永遠の片思いだ。
「芽衣ちゃんに告白しないの?」
「しないよ…振られるの分かってるし、芽衣を失いたくない」
「何で振られるって決めつけるの?」
「だって!私も芽衣も女だよ、振られるに決まってる…」
「分からないよ、同性を好きになってしまう人もいる」
「でも、、」
「私の好きな人も女の子だよ」
「えっ?」
ひかるの好きな人が女の子…意外だった。ひかるだったら優しそうな男性が好きだと思っていたから。そっか、ひかるも私と同じで悩んでいるんだね。
だって、切なそう顔をしながら教えてくれた。ひかるも私と一緒で報われない恋をしてるのかもしれない。
恋ってもっと楽しいものだと思っていた。人を好きになり、ワクワク・ドキドキしながら好きな人との未来を思い描き想いを募らせる。
私は苦しいことばかりで、逆に芽衣との距離の取り方が分からず悩んでいる。最近なんて夢に苦しめられて良いことがない。
「水希、私は気持ちを伝えるまで諦めないって決めてるよ」
「ひかるは偉いね」
「だって好きだから…最後まで頑張りたい」
「凄いよ、私は…」
「恋って難しいね。両思いになれるかなんて分からないし」
「うん、難しい」
ひかるは強い。私は最初から諦めて振られることしか考えてない。最後まで頑張りたいか…私も頑張っていいのかな。
諦めなくていいのかな、、気持ちをちゃんと伝えて振られた方がスッキリして前を向けるのかもしれない。
告白をしないより告白をして前を向く。しばらくは後悔や振られたあと凹むかもしれないけど新たに芽衣との友達関係を築けるかもしれない。
それに芽衣は優しいから・・・少し距離を取られるぐらいで済むかもしれない。
「あっ、かき氷が溶けちゃう」
「本当だ!」
「水希、今日お泊まりしたい」
「私の家に?」
「うん!」
「分かった、夜いっぱい話そうね」
ひかるに話して良かった。心が軽くなり、かき氷がさっきより美味しく感じる。
ひかるが私と同じように女の子を好きなんて驚いたけど、好きになった人がたまたま同性だったって感じだと思う。私もそうだし…。
不思議だな、中学生の時まで普通に男の子のことカッコいいやこんな人と付き合えたらって思っていたのに今は芽衣に恋をしてる。
芽衣に出会っていなければこんな感情を持たなかったかもしれない。芽衣だから好きになったのかもしれない。
だって、他の女の子にこんな感情を持たないし…ひかるは可愛いなって思うけど。
ひかるの好きな人って誰だろう。同じ陸上部の子かな?前からよく見学に来ていたし。
でも、ひかるは私を応援しに…いや、違う。私を好きなんて絶対にあり得ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます