第45話

ひかるって何でもできて凄い。お風呂上がりに、ひかるが私の足に湿布をしたあと包帯を巻いてくれた。

手早く綺麗に巻いてくれて…お姉ちゃんの巻き方と段違いだ。有難いけど、いかにお姉ちゃんが雑に巻いてたって気付けたよ。



「ひかる、ありがとう〜」


「痛くない?」


「うん。ひかるって何でも出来るんだね」


「練習したの…いつか水希が怪我した時にって」


「私、怪我多いから…ごめんね、気を使わせて」



ひかるはマネージャーの鏡だね。お姉ちゃんが最初、ひかるを陸上部のマネージャーとしてスカウトした時また犠牲者が出たって思ったけど、ひかるはマネージャーの仕事を楽しそうにしているから良かったって思っている。

それにマネージャーになったからこそ、ここまで仲良くなれた気がするし。今回だけはお姉ちゃんに感謝しないといけない。


あれ、、珍しく恭子先輩からLINEが来た。何これ?ガオーって書いてあり、怒ったライオンのスタンプと死神のスタンプが送られて来てめちゃくちゃ怖い。

お姉ちゃんからも…喝!って言葉付きの閻魔大王のスタンプが、、よく見つけたね、こんな変なスタンプ。


絶対2人で遊んでいるよ、ひかるとの時間を邪魔しないでほしい。

ひかるとの初めてお泊まりだから邪魔されたくないから無視をすることに決めた。

いちいち2人の相手にしていたら、お姉ちゃん達の思う壺だから相手にしない。



「あっ、このブレスレット可愛い」


「えっ、本当!?」


「水希の?」


「うん」


「いいな、私もこんなブレスレット探してたんだ」


「マジか、良かったー」


「えっ?」



ブレスレットを磨く為に机に置いていたのをひかるが見つけ可愛いって言ってくれた。

もういっその事、これがプレゼントだよって言ってもいいような気がする。

まだ磨いてないからすぐには渡せないけど、気に入ってくれるみたいだし。



「ひかる、それね…ひかるの誕生日プレゼントなんだ。私が使っていたやつだけど、、」


「水希が使ってた物?えっ、いいの!?」


「ごめんね、本当は新品を買いたかったけど…」


「こっちの方が嬉しい!ありがとう!」


「あの、ちゃんと綺麗にしてプレゼントするから」


「今、貰っちゃダメ?一足早い誕生日プレゼントってことで」


「いいけど、ラッピングした後の方がよくない?」


「すぐに付けたいからいいの」



本当にいいのかな、ひかるは凄く喜んでいるけど悩ましいよ。でも、さわちんの言った通りになった。

ひかるの手首にブレスレットを付けてあげると笑顔になり喜んでくれた。

「大切にするね」ってブレスレットに触りながら嬉しそうにしてくれる。


良かった、喜んでくれて。ちょっと早い誕生日プレゼントになったけど、誕生日の当日はお出掛けしてちゃんとお祝いをしたい。

ひかる、ずっとブレスレットを触ってる。よっぽど、お気に入りのデザインなんだね。



「幸せ、水希ありがとう」


「15日はケーキ食べようね」


「うん!」



芽衣ともこんな風に笑い合えたらいいのにと思った。芽衣は笑ってくれるけど、私が上手く笑える気がしなくて、このままじゃ誤解を生みきっと芽衣を傷つけてしまう。

どうやったら、芽衣と普通に接することができるの?どうやったら、芽衣のことを考えるだけで涙が出そうになるのを止めれるの?



「水希…どうしたの?」


「ごめん、気にしないで」


「今日、何かあった?」


「何もないよ」


「私じゃ頼りない?」


「そんなことない!今日、来てくれて嬉しかった」



ひかるが来てくれて、私の心の痛みが無くなった。でも、この変な感情をひかるには話せない。嫌われそうで怖いんだ。

この意味の分からない感情を言葉に出来なくて、できたとしても説明が出来ない。


もう嫌だよ。何で、意味の分からない感情に悩まないといけないの。何で、こんなに苦しまないといけないの。何で、こんなに涙が出そうになるの。

誰か助けて。この感情から解き放たれたい。苦しみから逃げたい。



「水希、泣かないで」


「ごめん…」


「どうやったら泣き止んでくれる?」


「分かんないや…」


「水希が悲しいと私も悲しくなる」


「ひかる…泣かないで」



ひかるまで泣いてしまった。私の涙が移ったのかな…ひかるの涙が止まらない。

どうしたらいいのかな、、私のせいだよね。面白いこと言ったら泣き止んでくれる?

でも、面白いことが何も思いつかない。何か1つでも鉄板ギャグがあれば良かったのに。



「ふふ。水希、変な動き」


「あっ、ひかるが笑った」


「水希もね」


「ごめんね、心配かけて」


「本当だよ、、」



ひかるがギュッと私に抱きついてきた。ごめんね、突然泣かれたら不安になるよね。申し訳ない、私のせいで泣かせちゃった。

ひかるからいい匂いがする。ひかるの匂いを感じながら抱きしめ返すと、更に強い力で抱きしめられた。この匂いに包まれるとホッとし安心する。


ひかるとは身長が近いから、抱きしめやすい。芽衣は小さいから私が丸まるようにしないといけない。

やっぱり、芽衣とひかるは違うな。当たり前だよ、違うに決まってる。ひかると芽衣を重ねようとする私は最低だ。

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