第30話

私は神様に願いを込めすぎたらしい。今頃、梅雨って…もうすぐ8月なのに!

暑いのも嫌だけど、こうも雨ばかりだと陸上部は室内での筋トレしかできないから体が鈍ってしまう。


せっかく晴れても雨、雨、雨、晴れという天気ではグラウンドが雨にやられ使えず、結局室内で練習になる。

グラウンドは大きな水溜りのせいで走ることはできない。筋トレばかりで飽きた。外を思いっきり走りたい。



「水希、筋トレサボるなー」


「休憩してるだけだもん」


「先輩に言いつけてやる」


「うわぁー、やめて」



芽衣がお姉ちゃんに似てきて困る。最近、本気で鬼軍曹化してきたような気がする。

私だってちゃんとやりたいけど、外はこんなに晴れているのに走れないなんて悲しいし、モチベーションが下がりまくるよ。



「水希。明後日の夏祭り、晴れるみたいだね」


「マジで!」


「うん」


「やったー、お祭り」



急にやる気が出てきた!人間、目先に楽しみがあると苦痛も練習も頑張れる。今は体を作る時期ってことで頑張るしかない。

ふふ、チョコバナナ楽しみだな〜。たこ焼き・イカ焼き食べたい〜。



「水希、急に元気出たね」


「チョコバナナのために頑張る」


「ほらー、そこの2人イチャイチャしない」


「恭子先輩!イチャイチャなんてしてないです」


「側から見たらそう見えるの」



普通に話していただけなのに、イチャイチャって…。別に手を繋いだり、抱き合ってもないのに、、どうしたらいいの。



「おぉ、芽衣ちゃん。可愛いネックレス付けてるね〜」


「あっ、これ…水希に///」


「水希、私に感謝しなさい」


「分かってますよ…」


「えっ?」


「私がアドバイスしたの。大切な人へのプレゼントは良いやつを贈りなさいって」


「そうなんですか///」



誇張しすぎだよね、、そんなこと言ってなかったよ。「芽衣ちゃんに似合うって思った物をあげるのが一番だよ」って言ったのに。

それにプレゼントであげるネックレスは2万円とか!ブランド物じゃないとダメとか!絶対に揶揄っていただけだと思う。


そらに恭子先輩さっきからニヤニヤしすぎ。本当に私の言ったこと真に受けてプレゼントしてるよって思ってそうだ。

私は信じやすいから揶揄うのだけはやめて欲しい。根が真面目で、騙されやすく素直にアドバイスを真に受けちゃうタイプなの。



「芽衣ちゃん、大事にしてあげてね」


「はい」


「水希、芽衣ちゃん泣かしたら承知しないからね」


「何でそうなるんですか!」



恭子先輩、私を揶揄って楽しんでいるでしょ。ちゃんと芽衣のこと大事にしてるし、、絶対に泣かさないし。もし、芽衣を泣かす奴いたら私が許さない。



「キャー」


「うぉ。芽衣、雷が怖いの?」


「うん…苦手」


「私も雷苦手〜。水希、怖いよー」


「恭子先輩、気持ち悪いです」


「こら、先輩だぞ!」



雨の勢いヤバくない?さっきまで晴れていたのにいきなり雨が降ってきて、雷が鳴り続けるなんて異常すぎる。

傘…持ってきてないよ。だって、天気予報では晴れって言ってた。


梅雨は天気が変わりやすいけど、今回はめちゃくちゃ変わりすぎだ。

私は雷がめちゃくちゃ怖いわけではないけど音にビビってしまう。耳にキーンってきて痛くなるから私は耳がいいのかもしれない。



「水希…手、繋いで」


「大丈夫?」


「うん…」


「あっ、今日の部活中止だって。大雨の中、帰る方が大変なのにー」


「恭子先輩は傘持ってきてるんですか?」


「一応ね」



芽衣は傘を持ってきてるかな?もし、持っているなら一緒に帰れるし、雷が怖い芽衣を帰り道守ってあげられる。



「芽衣、傘持ってきてる?」


「うん…」


「良かった。私、傘を持ってきてないから入れてね」



芽衣が小動物のように震えている。よっぽど、雷が怖いんだ。耳がいい犬やウサギも雷を怖がるよね。ふふ、芽衣っぽい。



「芽衣、少し雨が止んでから帰ろうか」


「雷、収まるかな?」


「多分、収まるよ」


「じゃ、私は帰るね」


「はい、恭子先輩お疲れさまです」



部員のメンバーがぞろぞろと帰っていく。私は時間潰しに、もう少しだけ筋トレをすることにした。

雷の音で耳がキーンってなるけどワクワクもする。雷って落ちたら怖いけど、安全な所で見てる分には楽しい。



「芽衣、足を持って」


「腹筋するの?」


「うん」



夏はお腹周りを中心に頑張ろうと決めている。海に行きたいから、少しでもお腹の肉を落とすと決めたんだ。

筋トレもできて痩せれて一石二鳥だ。



「芽衣、もう少しちゃんと持ってよ」


「だって、雷が…」


「飲み物、買ってこようか?」


「やだ、1人になりたくない」



どうやったら芽衣を安心させられるかな。芽衣が怯え、私は身動きが取れないし芽衣が今にも泣きそうな顔をしている。

あっ、そうだ。芽衣をおんぶして自販機までいったら安心するし、私も飲み物が飲める!うん、ナイスアイディアだ。



「芽衣、飲み物を買いに行こう」


「うん…」


「ほら、背中に乗って」


「おんぶするの?」


「これだったら、雷が怖くないでしょ」



いつもは渋々おんぶされるのに今日は素直に背中に乗ってきた。よっぽど怖いんだね。

ただ、しがみつくようにギュッとされると首が苦しい。もう少し、腕を緩めてほしい。



「芽衣、苦しいよ」


「あっ、ごめん」


「怖いなら抱っこにしようか?」


「意地悪言わないで」


「はは、ごめん」



抱っこなんて出来るはずない。だって、おんぶしてるだけで胸がドキドキしてるから無理に決まっている。

前まではこんな風にドキドキなんてしなかったのに、最近の私はおかしい。

恋に飢え、誰でもよくなってるとかじゃないよね?そんな最低な人間にはなりたくない。早く、ドキドキ治って!芽衣と距離を取りたくないよ。

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