第29話
「水希ってさ、竹本ひかると仲良いの?」
のんびりおやつ休憩をしてる中、さっきまでジュースを飲んでいたさわちんから突然、竹本さんの名前が出て驚く。
確かに竹本さんは何度も部活を見に来てくれてお菓子をくれるけど、さわちんが名前まで知ってるとは思わなかった。
もしかして知り合いなのかな?フルネームで名前を知っている。
「仲が良いわけじゃないけど、時々話すよ」
「そっか。私ね、ひかると同じクラスなんだ」
「そうなの?知らなかった」
「最近、仲良くなった。よく部活を見に来るから話すようになって」
「へぇ、そうなんだ」
「ひかる、可愛いよね」
「そうだね…」
さわちんはさっきから何が言いたいのだろう。急に竹本さんの名前を出し、可愛いって…確かに可愛いけどいきなり言われると私はなんて反応していいのか分からない。
それに、竹本さんの下の名前を初めて知った。ひかるって名前なんだ。
「今度、お祭りあるじゃん。みんなで一緒に行かない?」
「お祭り?別にいいけど」
「ひかるも誘っていい?」
「いいよ」
「4人でお祭りに行こう」
お祭りにみんなで行きたかったから竹本さんとの仲を聞いてきたのかな。
別に私は拘らないし、気になんてしない。それよりも、さわちんと竹本さんがいつの間にか仲良くなっていた事にビックリした。
元々、お祭りは芽衣と2人で行くつもりだったけどまぁいいよね。
みんなでワイワイ楽しめるし…あれ、芽衣の表情が暗い。芽衣って人見知りだっけ?
でも入学式の時、普通に声を掛けられたし明るいイメージしかない。クラスメイト・部活のメンバーや先輩とも仲がいい。
どうしよう、芽衣の返事を聞かずOKしたけどちゃんと聞いた方がよかったかも。
「さわちん、やっぱりお祭りは芽衣と2人で行くよ。元々、2人で行く約束してたし」
「水希、大丈夫だよ…」
「無理しなくていいよ。芽衣は竹本さんと話したことないから緊張するでしょ」
「分かった。芽衣もごめんね、急に言って」
さわちんと竹本さんには申し訳ないけど、私にとって芽衣が優先だからごめんね。
それにしても、さわちんがさっきから何かを考え込んでる。芽衣と私をチラチラと見て、あっ…私はいつの間にか芽衣の手を握っていた。
「あっ、雨降りそう…そろそろ帰るね」
「分かった。さわちん、気をつけてね」
「芽衣も私と一緒に帰る?」
「もう少しいるよ」
私達はさわちんを玄関まで見送ったあと、部屋まで戻った。
芽衣の表情は暗いままで、今日は雨が降るからあまり長いはできないけど芽衣のために何かをしてあげたい。
「芽衣、おやつ食べよう」
「水希、今日泊まっちゃダメ?」
芽衣の中で何かあったのかもしれない。私の服の袖を握り、表情が硬いまま抱きついてきた。急に甘えられると、ドキドキして心配にもなる。
私はいいよって言いながら芽衣の頭を撫で、安心して欲しくて初めてギュッと抱きしめた。緊張する、芽衣の体温が伝わってきた。
「親に電話しないとね」
「うん」
「夏だけどホットミルクでも飲む?」
「マシュマロある?」
「ないから一緒に買いに行こう」
「うん、ありがとう」
芽衣がやっと笑ってくれた。もう少し、このまま芽衣を抱きしめていたい。
芽衣と私は身長が約15センチ差で恋人だったら丁度いい身長差らしい。
なんとなく分かる気がする。ふと、思ったんだ…キスしやすい身長差だなって。
見上げる芽衣に私が首を下に傾けたらキスが出来る距離感になる。もし、私が男だったら…男だったら、芽衣との関係は変わっていたのかな?
もしかしたら恋人同士になっていたのかもしれない。そんな、もしもの話は考えても虚しいだけなのに頭から離れなかった。
「はい、ミルマロどうぞ」
「ありがとう〜」
「私はホットミルク」
「ミルマロ美味しいのに」
「いつかね」
暑い季節だからこそ、冷房の効いた部屋で飲むホットミルクは美味しい。体に染み渡る感じがして、気持ちが安らぐ。
私も芽衣も家でお風呂には入っているから、夕ご飯を食べたら今日はのんびりしよう。
宿題の続きは明日でいいかな。まだ夏休みは半分以上残ってるしゆっくりで大丈夫。
「芽衣、夏祭り楽しもうね」
「うん、浴衣着る」
「じゃ、私は私服にしないと」
「何で?」
「芽衣が疲れたと言ったらおんぶしないといけないから」
「もう!大丈夫だもん」
もうすぐ7月が終わる。芽衣と出会って4ヶ月、あっという間の4ヶ月だ。
高校を卒業するまで、どれだけ芽衣と思い出を作れるかな。私の高校はクラス替えがなくて良かった。卒業するまでの3年間、いっぱい遊んでいっぱい笑おう。
芽衣、これからもよろしく。大好きだよ。
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