第13話

あれ?おかしい、おかしいよ。登校するために歩いていると、チラチラと視線を感じた。

ご飯粒は制服に付いてないし、寝癖も大丈夫だし…スカートも捲れてもない。

全く理由が分からず、バスに乗っている時から感じた視線は何だろう?やっぱり、寝癖なの?と髪を触りまくるけど大丈夫だった。



「芽衣、おはようー」


「水希、おはよう」


「ねぇ、寝癖ついてる?」


「寝癖?うーん、ついてないよ」


「じゃ、制服にご飯粒ついてない?」


「水希、どうしたの?」



私は芽衣に朝から学校に着くまで感じた視線について話した。誰かに見られているって落ち着かないし、もしかしたらストーカーかもしれない(きっと違う)

でも、私の顔は中の上ぐらいと思っている。もしかしたら中の上ぐらいの人が好きな人に目を付けられたのかもしれない。



「水希が体育祭で目立っていたからだよ」


「体育祭?ほぼ、裏方してたのに?」


「部活対抗リレーのこと言ってるの」


「たった1種目じゃん」



確かに運動部の部活対抗リレーで生徒会が1位を取ったけど、それで私が注目される理由が分からない。私は嫌々アンカーとして走っただけだ。



「生徒会って人気が凄いんだよ。そんな中、生徒会の1年生が陸上部を抜いて逆転勝ちしたら注目されるよ」


「そうなの?」


「うん、水希の名前が学校中に知れ渡ったんだよ」


「えー、やだ」


「贅沢もの」


「注目されるの嫌い…」



私は穏やかに高校生活を過ごしたい。お姉ちゃんに無理やり生徒会と陸上部に入れられ、私の思い描く高校生活が狂っているのにこれ以上脱線したくない。

早く青春と恋をしたいのに、人生は思い通りにいかない。部活で青春を少しは感じるけど、恋は程遠く私に彼氏ができる気がしない。


せめて共学だったらと何度も思った。生徒が全員女の子だから気持ち的には楽だけど、全くと言って出会いがない。

彼氏がいるお姉ちゃんに彼氏とどこで出会ったか聞いてみるしかないかもしれない。もしかしたら運命の人との出会いのヒントがあるかもしれない。



「水希、今日は生徒会あるの?」


「今日はないよ」


「じゃ、一緒に部活行こうね」


「うん」



あれ…今日はどうしたのだろう。放課後、芽衣と一緒にグラウンドに来たら陸上部の見学者がめちゃくちゃ多い。いつも数人はいたけど、今日は10人以上いる。

もしかして、これも部活対抗リレーの影響?でも、見学だけだったら陸上部に入ればいいのに…私には見学の意味を見出せない。



「凄いね」


「すぐに収まるよ。芽衣、早く準備しよう」


「うん。あっ、今日はビデオ撮影する日だから機材持ってこないと」


「じゃ、着替えたら職員室に行こう」



ビデオ撮影の機材は重く、芽衣は小さいから三脚を持つと引きずってしまい私がいつも三脚担当として手伝っている。

部員の数に対して陸上部のマネージャーが少なすぎる。芽衣1人だと大変だし、出来ればもう1人マネージャーが入ってほしい。そしたら、芽衣は楽になれるのに。


ずっと新たなマネージャーを探し募集している時に芽衣はお姉ちゃんに捕まった。

マネージャーの仕事は大変で記録やビデオ撮影・雑用など今の時点で裏方の仕事を芽衣が1人でやっている。

出来るだけ手伝いたいけど、芽衣は断るし私も走ってることが多いから手伝うタイミングが難しく合わない。



「水希、三脚重くない?」


「芽衣と比べると軽いよ」


「もう!馬鹿!」


「嘘だよ、芽衣の方が軽いよー」


「嫌い」



気にしなくていいのに、芽衣は私がマネージャーの仕事を手伝うことを気にする。

みんな、同じ陸上部員なんだから気にしなくていいのに。それに、他の部員も芽衣の仕事を分担しながら手伝ってることが多い。

みんな、ちゃんと芽衣の仕事を振りを見て支えようとしてくれている。


三脚のセッティングが終わり、私はストレッチをする。生徒会メンバーとして忙しかった体育祭が終わり、今日からまた基礎体力と体幹鍛えを頑張らないといけない。

部活対抗リレーは偶々勝てただけだ。きっと、次は勝てない。あの時は不思議なほど力が漲りいつもより力が出せた気がする。あの時と同じぐらいの力を蓄えないといけない。



「水希ー!芽衣ちゃんー!」


「あっ、お姉ちゃんが呼んでる」


「本当だ」



あれ?部員全員が顧問の先生の前に集まっている。いつもだったら、それぞれの競技へのウォーミングアップしてるはずなのに。

私達は急いでみんなの所へ行くと私はお姉ちゃんにみんなの前に立たされた。



「えっ、あの…」


「高瀬姉妹、部活対抗リレーよくやった」


「ありがとうございます」


「あ、、ありがとうございます」


「生徒会に負けるのは陸上部としては悔しいが嬉しくもある。みんな次の体育祭の部活対抗リレーは陸上部が絶対に勝つぞ!」


「はい!!!!」



緊張する…みんなに注目されて圧を感じる。同じ陸上部員なのに、部活対抗リレーではライバルで先生が嬉々としながら次こそは生徒会に負けないと言い、ライバル視する。

先生…丁度いいライバル的なポジションを見つけたと思ってるでしょ。でも、体育祭は文化祭と一年毎に交互にやるから来年はないし、私はもう二度と生徒会役員をやらないと決めている(これ以上目立ちたくないの)

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