第34話 古の工場に潜むモノ

「しっかし……、派手にやられてるわね。骨絡繰」

「恐らく同士討ちか。まともに制御すらできていないようだな。まァ、外の青い絡繰どもも大概だが」

 工場の制御室を探しつつ三人が辺りを見回すのだが、骨絡繰兵――プロトタイプの残骸があたりに散らばっている。

「さっきも片っ端から人襲ってたみたいだし、陣のオッサンの言う通りかもな」

 気が抜けるとアイシャは言う。陣は言い返すのはやめている、軽口をたたいてる場合ではないからだ。


「伏せろ!」


 陣が警告を発し、銃を構え、引き金を絞る。

 天井から大きな爆発音がした、破片が飛び散る。

「設置機銃だ。小さいがあの機銃が吐く銃弾は人や動物を容易く貫く、気を付けろ」

「……確かにヤバイ工場みたいだな、ここ」

 陣が機銃だったものの破片を銃の先端で指して言うと、アイシャは改めて危険な場所にいる事を再確認させられる。

「機銃の設置場所からして、プロトタイプ……だっけ? それが制御できなさそうなのは見越してはいたみたいね」

 この工場を作り出した者の性格の悪さが見て取れると京はいう。

 機銃さえまともに動けば始末できると考えたのだろう。

「これ、何かしらね。鏡みたいだけど」

 京が壁に横付けされている箱のような物のを見つけた。一部は鏡面を思わせるような素材で出来ている。

 箱ようなものの下には西洋の文字が羅列されたものが外付けされていた。

「これも機械のようだが……、ここは慎重に――」

「あー、面倒くせェ!」

 陣が考えあぐねていると、アイシャが前に出て箱を思いっきりぶっ叩いた。

「!?」

「待て、迂闊に触るな!」

 京と陣が驚くのだが、箱からいきなり声が出る。

「責任……を確認。制御……の……を開錠……」

 音声に所々雑音が混じるのだが、鍵が開いたのは確かなようだった。

「なッ、うまくいっただろ? 細かいこと気にしたら負けだってコトってのは確かだな」

「力技で解除するとはな……。これをどう上官に報告すればいいのか」

 ククっとアイシャが笑うと陣は大きく肩を落とす、力技で突破してしまったのだから無理もない。

「……あははは」

 京は乾いた笑いしかできなかった。

「まったく……。さて、制御室の扉を開けるぞ。奥に何がいるかわからん、気を付けろ」

 陣が前に出て、扉に手を掛けるのだが――。


「なんだ、急に寒気が……」

  

 寒気を感じたアイシャが肩を抱く。京も陣も似たようなものを感じた。

「この悪寒は――ッ!」

 アイシャの言葉を聞いた京の顔がこわばる。

「《霊》ッ!」

 悪寒――京が恐れていた《霊》の出現を示す予兆だった。


「忌々しき周軍め、我が宝貝とこの完成したこの絡繰で始末してやろう……!」

 

 古い時代の装束を着た男が三人を睨んでいた。手には宝石をあしらった宝剣を手に持っている。

「周! じゃあこの《霊》は……」

 恐らくはこの男こそが工場の「管理者」であり、かつての殷の人間だったのだ。

 





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