第3話 京《ケイ》、野盗に遭遇す
「食べたわ~。ご馳走様、ばあちゃん」
「いえいえ。また街に来てくださいな。そうでした」
街長がにっこり笑うのだが、何かを思い出したように手をポンと叩く。
「花が咲きましてね。百合の花でございます」
街長が白い百合の花を差し出してきた。
「ありがとう、師範が好きだったから……。っといけないいけない」
受け取った京の頬に涙が伝うが、すぐに布で涙を拭った。
「元気でないと、ね」
「あまり抱え込まない事ですよ。それでは、老師様。お気を付けて」
街長が頭を下げて、京を見送る。
「そんじゃ、またね。ばあちゃん!」
「ええ。またね」
京が手を振ると、街長も応えるように手を振った。
いつもの竹林に差し掛かったところで、京は《氣》が動いた感覚を感じ取る。
――人間!?
京は驚かされた。統制された動きをする軍隊とは違うが、確かに人間だ。
「ちょっと、そこの姉ちゃん。俺の話を聞いてくれよ」
竹林から現れたのは、少女だった。荒々しい口調にお下げが特徴的な少女だ。
来ていた服は豪華なものだったが誰かから奪ったのだろう、ボロボロだ。
おそらく名のある富豪からでも強奪したのだろうと予想がついた。
――この娘が噂の野盗?
少女は荒んだ生活で困窮し、ついに追い剥ぎに手を出したのだと思われた。
しかし、殺人までは犯していない、血生臭さがなかった。
「話は簡単。姉ちゃんが持ってるもの全部、ここに置いていけ」
京が自分に恐れおののいているとおもっているのか野党はニヤりと意地の悪い笑みを見せる。
「嫌に決まってんでしょ?」
少女の脅しに対し京はアホかという風に首を横に振る。
「へェ、そうかい。いい度胸じゃねェか、姉ちゃん。なら俺を軍人サマにでも突き出すか? やってみろよ」
「いやいや……」
京はククッと笑うと、少女はそれを訝しむのだが。
「直々にお馬鹿な性根を叩き直してあげる!」
京が啖呵を切って拳を構えるのだが、少女は軽口をたたく。
「おいおい姉ちゃん、冗談はその可愛い顔だけにしとけよ」
「やった、かわいいってほめられた! いや、みんな老師様って呼んでさ、遠慮がちになってるんだよね」
少女が軽口をたたくと京が喜び、構えを解いてしまうのだが。
「はァ? なんなんだ。この女……」
少女は呆気にとられるが、隙が出来たのは間違いない。
「舐めやがって……。その可愛い顔をボコボコにしてやる」
少女が京の距離を素早く詰めるのだが、京はしてやったりという風に真顔になり、
「油断大敵って言葉知ってる?」
京が蹴りを放った。技はない、これは小手調べだ。
「――ッ!」
しかし当たればタダでは済まないと少女は冷や汗をかかされる。
「野盗ちゃん。骨のあるところ、見せてよね?」
ここに京と野盗の少女との戦いの幕が上がったのだった。
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