第360話 変わらない
俊哉には、ほとんど現実味のない話だ。それとなく知ってはいても、冗談半分だと思っているだろう。
昨晩、将也の召喚に成功し、詳しい話は今夜となったが、帰る時に瑶迦に言われたのだ。
『高耶さん……そろそろ自覚をしていると思いますが……覚悟をしていってくださいね。長く……遥か長く生きていく……存在し続けることの覚悟を』
もう確信しているようだった。だから、本当に今後の事は考えていかなくてはならないだろう。それには、俊哉との関係も含まれる。
「……俺は多分、もう少しすれば、年を取らなくなるかもしれない」
「それ……姫様みたいにか?」
「ああ。術者はそれなりにそういう人が居る。蓮次郎さんだって、見た目よりかなり年上だから分かると思うが」
「あ〜……そういえばそうだったな……」
焔泉もだが、見た目よりもかなり年上という人は多い。神楽部隊の伊調だって、本当ならばもう引退している年齢だ。
「けど、高耶がそこまで気にするってことは、あの人達の比じゃねえってこと?」
「そうなる。お前に孫やひ孫が出来ても、このままかもな」
「……やべえな。それ……っ、自慢できるじゃん……」
「……ん?」
俊哉の目が輝いた。それは高耶も予想外だ。普通なら、そんな事を言われれば、気味が悪いだろう。だが、俊哉は笑っていた。
「俺のダチなんだぜって、自慢したいじゃん! そんで、『はあ? 何言ってんのじいさん……』って散々言われた後に『マジだった!!』って証明すんだよ! めっちゃ楽しいじゃん! 病院のベッドで死にそうになってからやろっ。高耶、ちゃんと見舞いに来るんだぞっ」
「……え……あ、ああ……は?」
意味が分からんと高耶は呆然とする。
「ふっふっふっ。そうなると、子どもとかにも、姫様んとこ連れてったりできねえな……よし! 俺だけのフロンティアにする! 嫁は綺翔さんだしなっ! 夫婦の秘密の遊び場っ……やべえ、イイ!」
「……」
なんだか勝手に一人で盛り上がっている。密かに周りには聞こえないようにしていたが、もうこれはいつもの俊哉だし、いいかとそれも解いた。お陰で、側を通り過ぎる者もいなくなった。完全におかしな人を見る目を向けられているが、高耶は気にせず食事を再開する。
「変わらんな……」
全く態度が変わらない俊哉に、少しほっとしつつ、高耶は知らず少し笑っていた。
「変な奴……」
そんな事もありながら、食事を終えて家に帰ると、将也が待っていた。
《あっ、お帰り〜。食事は済んだのか? なら、稽古するか!》
「いや、これから優希の学校に行くんだよ。きちんと髪をセットして、服もそれなりにするために帰って来ただけだ」
《髪? 服? というか、お前、その髪型すごい不自然だな。前髪切らないのか?》
高耶は今、前髪で目を半分隠したような髪型だ。将也には不自然に見える。
「これで地味に見せてんだよ」
《はっ、そっか、お前モテるはずだもんなっ》
「はずってなんだよ……」
訳のわからない確信が将也にはあるらしい。これは本当に昔からなのでもう話半分で聞くようにしている。
「それより、父さんも来るなら着替えてくれ。それ道着だろ。瑶迦さんの所で服を選んでもらうぞ」
《ん? 瑶姫様の所で?》
首を傾げながらも付いてくる。すぐに藤が出迎えてくれた。
《こんにちは。高耶さん》
「こんにちは。あの、父さんに良さそうな服はありませんか? 珀豪達も外での服を決めているので、父さんもと思いまして」
《そうですわねえ。ええ。こちらで合わせてみましょう。この後、お出かけですか?》
藤のスイッチが入ったのが分かった。本気で選んでくれそうだ。
「優希の学校に。父さんは後で喚び出します。さすがに土地神にもまた許可を取る必要があるので、お許しいただけないこともありますから」
《分かりました。では、時間はありそうですわね。将閃さん、こちらへ》
《え? あ、はい!》
高耶は、いつもの衣装部屋に行くとそこで待ち構えていた松達に服をコーディネートされ、その後すぐに小学校に一人で向かったのだ。
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読んでくださりありがとうございます◎
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