第192話 協力体制が敷かれました

金と白銀のところでは紋章が違うと知って、高耶は単純に別物なのではないかと思った。


今回の騒動の元となった剣。それと同じ装飾のある白銀の剣が写真に写っている。


「この部屋に来る途中で、二つの甲冑かっちゅうを見ました。それぞれ、コレと同一の物が混ざっているのではないかと」


おかしいと思ったのだ。一部だけ色の違う甲冑があった。それが瑠璃が祓ったものだったのだろう。


「……あり得るね……」

「な、なるほど……あ、いや。色が違うはずだが……こんな綺麗な白銀では……」


大和には、写真の甲冑が白銀に見えている。そして、ここにあるものは、美しいほどの黒の甲冑と灰色の甲冑だった。しかし、先ほど見た時は白銀の脛当すねあてと金の面になっていた。


同じように蓮次郎も奇妙に思っていたようだ。


「いや。本来の白銀と金に戻ったのでしょう。見た目を変えていたのかもしれません。橘家の封じがしてあったものも、籠手こての部分でしたが、そこが瑠璃殿に祓われた後、他とは違う輝くほどの金になりましたからね」


金は金だったのだが、明らかに質が違ったらしい。


「そんなに見た目が……?」

「一般には変わっていないかもしれませんね。後で確認してください」

「な、なるほど」


視えないというのは、怖いものだ。大和は不安そうな顔をしていた。


「けど、この調子だと、半分くらいどこかにあるねえ」


頬杖をつきながら、蓮次郎は困ったねとトントンとスマホの横を指で叩く。


「ですけど、ここまで集まっているのも奇妙ですね……」


そう言って大和を見た。


「……確かに」


蓮次郎も大和を見た。


「……っ」


ジッと見つめられて、大和は固まった。


「あ、すみません。すごく理想的な環境だなと」

「本当にねえ」

「……協力しますよ?」


キラリと目を輝かせて、高耶と蓮次郎は横目で目を合わせた。そして、ニコリと笑う。


「ありがとうございます。全力でサポートさせていただきます」

「橘の当主として、完璧に守ってみせますから、安心してもらって構いませんよ」

「……お願いいたします……」


エサにするような真似はしない。あくまでも、集めやすい環境を利用させてもらうだけだ。


「あちらの方への連絡は、高耶くんに任せていいかな?」

「ええ。すぐに」


そうして、後日また集まることに決まった。


細かい打ち合わせを終え部屋から出ると、俊哉に先ずメールをとスマホを取り出したところで、声がかかった。


「あっ。御当主!」

「高耶! 終わったんか」


外に、店長と俊哉達がいた。ジュース片手にお茶をしていたのだ。


「店長……仕事は良いんですか?」

「もう対応は終わりましたから。外までお送りします!」

「あ~、すみません。ありがとうございます」

「いえいえ! あ、そちらの橘様も」

「悪いねえ。というか、高耶くんって、本当に色んな所に知り合いいるねえ」


感心しているらしい。確かに、知り合いは多いかもしれない。


「半分くらいはバイト関係ですよ。大和さんもそうですし」

「そのバイト。気になるんだけど」

「俺が紹介すると問題になるので……」

「そうなの? 残念。どうにかして潜り込めるようにしてみようかな」

「……」


蓮次郎なら上手くやりそうだ。


そうして、話をしながらシャッターで区切られた場所から出た。店長と別れ、優希の居場所を探る。


「ねえ、蔦枝つたえくん」

「ん? なんだ?」


声をかけてきたのは瀬良智世だった。


「その……相談があるんだけど……」


その表情は、とても深刻そうだ。


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