第123話 誘い過ぎでは?

カナちゃんやミユちゃんのところへは、優希を連れて珀豪がお誘いに行っていた。


「あ、お兄さんっ。本当に良いの? 私達まで誘ってもらっちゃって」


既にミユちゃんとカナちゃんは母親達から離れて、優希と玄関先で荷物の確認をしているようだった。


本当は明日の昼間だけ遊びに誘えればと思ったのだが、どうやらお泊りからの参加になったらしい。


「構わないですよ。旦那さんとの予定はありませんでしたか?」

「ないわよ、そんなの~。寧ろ、朝早くから泊まりでゴルフしてくるって、朝ごはんを早くに用意させてさっさと出かけちゃったわっ。ね~」


どうやら、二人の夫も友人らしく、他の仲間達と共にゴルフに出かけたようだ。若干、怒っていた。


「あの子達がもっと小さい時は、水族館とか動物園とか、休みの度に出かけてたのに、最近はあれよ。家族サービスに飽きたみたい」

「わかる~。子どもがまだ小さい時は、家族のために頑張ってる感出してくるのよね~。まあ、可奈も小学校に入って大人びたっていうの? オマセさんっていうか、それでちょっとあの人、戸惑ってんのよね~」

「たしかに~」


色々と溜まっているらしいことは分かった。


これについては、娘を持つ男親にも色々思うところはあると思うので、同意するのはやめておいた。


「私達も泊まりって久し振りなんだけど、最低限の荷物で本当に良いの?」

「ええ。人里離れた場所ではありますけど、物に不自由はないですし、世話好きな人達ばかりなので、足りないものがあればすぐに用意もできますよ。ご実家とまで気安い認識は出来ないでしょうが、そんな感じで大丈夫です」

「そお? 全然想像できないけど。うん。お兄さんを信用するわっ」

「ハクさんもいるしねっ」


相変わらず珀豪への信頼は篤い。


そこへ、源龍が時島を連れてやってきた。


「時島先生……?」


まさか連れてくるとは思わなかった。こっちも泊りでいいらしい。


「いやあ、やはりしっかりとした保護者は必要かと思ってね。先生が居れば、あの少年達も来やすいだろう?」

「あ、確かにそうですね」


源龍に連れられて、時島は苦笑しながら近付いてきた。


「誘われてつい、来てしまったが良かったか?」


迷惑ではないかとその顔には書いてあった。


「いえ、助かります。俺なんかが突然行っても、一度会っただけの小学生と会うなんてできないですからね」


思い詰めていなければ良いのだが、本来見えないものを見たという恐怖は、清めた所で消えない。


何より、彼らは恐らくコックリさんを実際にやっていた。瘴気は払っても繋がりやすくなっているのはどうしようもないのだ。


その上、ここ数日様子を確認したところ、二人の少年は体調を悪くしたりして学校を休んでいるようなのだ。きっと、あまり眠れていないのだろう。


「毎回、こうして被害に合った者を集めているのか?」

「いえ。いつもならば遠くから経過観察をして完全に影響がなくなるまで見守って終わりです。特にこれが大人の場合はそれほど気を遣いませんし」


大人とは違い、子どもに勝手に不安に折り合いをつけろと放置することはできない。


「私たちの業界では、一応はそういう見守り担当もいるんですけどね。全部を全部フォローはできないですから」


源龍の説明に確かにと時島は頷いた。


「今回は特に怖い思いをさせましたから、息抜きといいますか……自然の中で落ち着いてもらえればと思います」

「えっ、遊ぶんじゃねえの!? まさかのセラピー系?」


俊哉は高耶と遊ぶ気満々だったようだ。これに呆れ顔で返す。


「……お前には必要なさそうだから帰ったらいいんじゃないか?」

「やだよ! 俺だけ仲間外れとか寂しいじゃんっ」

「……」


今日は特にテンションが高い。


「あははっ。なに? そっちのお兄さんは今までも遊んでもらってないの?」

「そうなんすよっ。お泊まり会もハジメテです!」

「ふふっ、それは寂しいねっ。ほら、高耶くん。寂し過ぎてこっちの子が死んじゃう前に遊んでやってよ。そんでついでに私達とも遊んでよっ」

「お姉さん達イイ人! 俺の寂しさ分かってくれるイイ人だ!」

「……」


ヤバイ。


この人たち、テンションが同じだ。


高耶が今まできれいにかわして、あまり深く付き合わないようにしてきた人種だ。


「……その、蔦枝……人が自然に集まってくるのは良いことだと思うぞ……何事も付き合い方が大事だ」

「はい……」


『友達は選べ』という人がいるが、それは無理だ。友達とは自然に寄って来て、いつの間にか側にいるものなのだから。あえて作るものじゃない。大事なのは『付き合い方』だ。


お互いがお互いに染まらず、個を持ったまま付き合える人とは、長く一緒にいられるものだ。それは意識するものではなく、自然とその形に納まる。それが親友となるのだろう。


俊哉は高耶にとってそんな存在になりつつある。どうあってもあちらは染まらないし、こちらも染まりっこない。それでも側に居られるなら本物だ。


ウザがっても嫌いなわけではないし、バカを言っても許し合える。


バカを言うのは俊哉ばかりだが、それもそれだ。


そうして家の前で騒いでいれば、優希が顔を出す。


「お兄ちゃんっ。早くいこうよっ」

「あ、そうだな」


高耶は皆を家の中へ招き入れる。


「え? ねえ、お兄さん。行くのに家に入るの?」

「ええ。入り口が中にあるので。あ、靴は持ってください」

「「わかったわ……」」


混乱しながらも、高耶に言われるままに全員が家に入っていった。


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