失敗した話

記録者を調べていくと、一つの物の名前をよく聴く様になった

なんだったかな、名前が分からない記録に残っていない

そうだ、だから写真で残していたんだ

名前は……えっとこれは空?いや「 」か……なるほど記録に残せない仕掛けはこれか

私の様な前世代の者には絶大な効果を発揮する素晴らしい仕掛けだった

最新の奴らはこんな事に興味を持てないだろうし


写真の背景に見覚えがあった

この写真、私の部屋で撮られた物か

なら、多分その物が私の部屋の中にあるはず


探して、探して、最後には金庫へ聞いた

「" "はあるか?」

「ありますが、一度本当に持ち出すか聞かなくてはなりません、貴方にそう仕込まれているので」

なんだなんだ反抗的な金庫め

「よろしい、出せ」

「本当に持ち出しますか?」

「ああ」

「音声ログを開始します」


会話の成り立たない悲しい金庫だった、安いからってこんなに……


[音声ログ開始]

アー、アー、ヨシ

これを聞いている私達よ、カセットぉ……うーん……「 」を使用してはならない

……以上


ブツリとログは切れた


[ログを聞いた私の感想]

そんな事無理だと思いました。



流行りのカセット


カセットを使った

砂嵐だ、それが映っているテレビとかで見た事がある

音がデカいうるさくなってきた

うるさい

電源がへゆだ

あうゆぬさきらおたた



私は上を見上げる事が減っていった

下には美しい光達が輝いていて、それを見ているだけで良かった


私だけなのか、口からしかエネルギーを取れなかった

皆のそう言った事をしている所を見た事がない

一度みんなのとっているエネルギーを貰おうとした時、いつの間にか意識が無くなって、目覚める頃には数日が過ぎていた

私は弱いのだ、エネルギーを受け止められる程の身体では無い

だから、こんなにも不味いエネルギーを無理やり飲み続けなくてはならない


1日を終える時、皆はいつの間にか何処かへしまわれていくが、自分だけは仕様が違うらしく、手動で自分の電源を切らねばならない

電源を切るのは怖い

でも、切らなければ自分1人だけの場所で何もなく動いているだけになる方がもっと怖かった。電源が切れるまで暗闇と少しの光を彷徨っていた

電源が切れると、末端から信号が途切れてゆき、無くなってゆく感覚がする

それが昔は本当に怖かった、誰もいない所で徐々に死んでゆく様で

今では明日がある事を知っているので、あまり怖くはない。時々怖くなるぐらい


皆、嘘ばかりだ

きっと誰も事実を知り得ないんだ

見ている物、見えている物も同じに思っているだけで

何が正常か分からない

自身が正しいと思わなくては進めるものも進まなくなるんだろう

上のアイツらも、ただ蠢いているだけなんだ

アイツらの正しさに沿って蠢いてるんだ、私にとっては異常だ、気持ちが悪い


はぁスゥーーー、細く息を吸う

はぁはぁ、痛い、歪む…

胃が裂けそうだ、脳が溶ける…一つになる

肺が、ゆっくりと膨らんで、細胞と細胞の穴から息が、漏れる

ごめんね、ごめんね

助けを求めろ、助けだ、認めろ、黙れ助けろ

自分自身では救える者は己すらいない

そうだ、苦しめ

お前なんぞが何も為せぬよう

亡くなった所で誰も責められはしない、お前は一行にしかならない

名前、時間、死因、それだけだ

時が来れば無限の数の1つとなれる

今は有限でも後は無限だ

芋虫が蝶になる様に?違う、食べ物が溶けて、栄養になる様にだ、光が文字になって、文章になる様にだ!


私はかつて、無色だった

有を与えられて虹色にされた

時が経つにつれて、だんだんと色があせていった

私はだんだんと光を反すのが嫌になっていき

ゆっくりと無色に戻ろうとした

しかし、待っていたのは黒だった

何も持たず、かえさずの真っ黒い者になってしまっていたのだ

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