第5話 姉様がザマァされちゃった
会場の全員がわたしに注目をする。
それもそうでしょう。王子であるルークスに呼ばれて近づいたかと思うと、その横にいた女性に張り手をしたのですから。
叩かれたリリアがキッ、っとこちらを睨みつけてきて少し怖いですが、ここで怖気づいては悪役令嬢の名折れ。耐えます。
「何をしているんだ君は!大丈夫か、リリア?」
照明の光で、リリアの怖い顔が見えなかったようで、ルークスはすぐさまリリアに駆け寄りました。
「ルークス様、いきなりぶたれてしまってリリア、痛いです」
「大丈夫だよ。リリア、君は俺が守るから」
本当なら、守られるのはわたしのはずだったのにと思うのは、未練がましいのでしょうね。
「ステラ。今日、現在、今をもって君との婚約を破棄させてもらう。そして、君がリリアや他の生徒にしてきた悪事をこの場で発表する」
今まで見たことのないような表情でルークスが怒鳴ります。
そこでわたしは口を震わせて言います。
「わたくしが他の生徒にしてきた悪事ですって?」
「あぁ、そうだ。事情は被害にあった生徒全員から聞いているんだ」
「なんの話ですの? わたくしはそんなこと知りませんわ‼︎」
リリアさんに手を上げようとしたことや、嫉妬で強めにあたったことはありましたけど、それ以外に何かありましたっけ?
「とぼけるな! とある男子生徒は、好きな女生徒に告白するためのラブレターを君に捨てられたと言っていたぞ!」
「毎日、差出人不明の手紙が届いて怖いと相談を受けたので、処分しましたよ」
筆文字で屋上に来い、校舎裏にこい、なんて人気のない場所に連れ込もうとする悪質な手紙だったので捨てただけでしたのに。
最終的には毎日十通くらいきてて不気味でした。
「他には、母の形見だったものを君に取り上げられたと」
「学園内では宝石類の装飾品は身につけてはならないと校則で決まっているので、当然のことをしただけです。もちろん、ダンスパーティーの前にお返ししましたわ」
没取したときに学年とクラスを聞き忘れて焦りましたけど、なんとかダンスパーティー前に返せてよかったです。きちんと理由を説明したら謝られましたけど。
「ほ、他には教室を一人で掃除するように命令されたり」
「遅刻されたかたですわよね」
「……取り巻きの生徒に虐められたり」
「きちんと謝らせて、仲直りさせました。この間は仲良く食事してましたよ」
「………家を追い出されたり」
「痴漢をなされていた現場を見たのでご実家に報告しました」
「…………………………………」
ルークスが黙ってしまいましたが、どうかしたのでしょうか。
「……そうだ、君はリリアに手を上げ、彼女の心を傷つけた! だから、俺は君との婚約を破棄する‼︎」
若干、声が裏返っていますね。
しかし、覚悟はしていましたけど長年好きだった人から嫌われるというのは辛いですわね。
あの約束をしたずっと好きだった銀の王子様、さようなら。
周りは呆然としています。ダンスの相手もいないわたしがこれ以上いても邪魔なだけですね。
リリアに言いたいがまだまだありましたが、さっきの一撃でスッキリしましたし、そろそろ頃合いです。
「話が終わったのでしたら、私はこれで」
ルークスとリリアに背を向け、会場をあとにしま「ちょっと待ってもらおうか」
えっ、何ですの? って、あなたは。
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