第4話 姉様の思い。ザマァの始まり
わたしの名前はステラ・フォールド。
この国でも歴史ある貴族の娘です。
生まれた時から公爵家の娘としての看板を背負って生きてきました。
貴族たるもの、国民の見本となるべく、日々精進してきました。
お母様は私が幼い時に亡くなり、厳しいお父様育てられました。
そんなわたしの唯一支えが、次期国王であり、婚約者であるルークス王子です。
王家のみに受け継がれる銀髪をなびかせ、曇りなき眼でわたしを見つめて下さったあの方。
『すてら、おおきくなったらぼくのおよめさんになってください』
まだ、二人が小さな時にした約束。永遠を誓いあったとも言える恋のきっかけ。あの方は覚えてくださっているのでしょうか。
いいえ、忘れてしまわれたのでしょう。
あの女を選ばれたのだから。
憎い。あの女に奪われてしまった自分が。
悲しい。あの方に愛されたかったことが。
悔しい。お父様に花嫁衣装を見せれないことが。
辛い。弟に惨めな姿を見せてしまうことが。
いよいよ、明日はダンスパーティー。
学園最後のダンスパーティーで愛を誓い合った二人は永遠に結ばれるという伝説。
その場所でわたしは婚約破棄を正式に言い渡されるでしょう。
なら、せめて。
あの人の心に一生残るような大舞台を用意しましょう。
わたしを振ったんだから、ちょっとくらい痛い想いをしてもらっていいわよね?
だってわたしは、わたくしは、学園の女王で悪役令嬢なのだから。
ー運命の日ー
さぁ、待ちに待ったダンスパーティー当日。
普段は地味なあいつやあの子も派手に着飾ってますな。
学園は一日中お祭り騒ぎで活気に溢れてる。
国で一番と名高い楽団が奏でる優雅な音楽と共に恋仲同士が甘い言葉を囁き合う。
いーなー。って、正直思うよ。
前世ではモテないがゆえに恋愛ゲーム会社に就職して、作ったキャラクターたちを恋愛させたり破局させたりしたもんな。
そのツケがこの目の前に広がる光景ってわけか。当然の報いだよな。
さて、本題に入るとしますか。
もうすぐ、本日のメインイベントのダンスタイムが始まる。パーティーの締めと最上級生の学園生活最後を締めくくるわけだ。
そのダンスタイム開始の挨拶は、最上級生代表がする。今年はクソ王子が代表なのであのバカはそこで婚約破棄を姉様に言いつけてリリアと踊り始める。
そのあとに一大事件が発生するので、俺の出番はそこになると。
大丈夫。この流れだけはこの十数年間忘れたことはない。
何がなんでも公爵家の取り潰しと姉様の幸せだけは守らねばならない。
「ーーーーでは、そろそろ最上級生代表より挨拶を承りたいと思います」
司会進行のアナウンスが入ると、広いダンスホールの入り口から一人の男が入場し、拍手で迎え入れられる。
白いタキシードを着た銀髪碧眼のイケメン。我らがクソ王子。
その横には胸元をこれでもかと強調するような、ふしだらなドレスの女が立ち並んでいる。
誰だよ、あんなコスプレみたいなエロコスチューム考えたやつ。
えぇ、僕ですよ。
確か、ゲーム最後のシーンで主人公に着せたい衣装なんです! って、デザイナーに頼み込んだよあれ。制作初日にね。
発売後のレビューには『ストーリーも微妙だったが、一番の問題点はあのドレス』とまで言われたからな。
周囲もドン引きだよ。男子生徒の一部はリリアの胸を凝視して、隣の彼女に足踏まれてるけど、自業自得だよね。
僕に関しては、動く黒歴史を前に赤面だよ。このあと大丈夫か?
そうこうしてる間にルークスが壇上に上がり、挨拶を始めた。
「ーーーしてくれたら友人たちには感謝だ。話が長くてすまないな。それじゃあ、そろそろダンスの方を始めようか。でも、その前にひとつみんなには知っておいて欲しいことがある」
なんだ? なにがあったんだ? と会場がざわつく。
そして皆、姉様がルークスの隣にいないことにやっと気づく。
「ステラ。公爵家令嬢、ステラ・フォールドはいるか?」
「はい、わたくしはここにいますわ」
凛とした声で返事をしたのは、お決まりのドリルツインテールに金の刺繍が入った白のドレスを身にまとった姉様だ。
うん。最後まで悩み抜いて考えただけあって、リリアのドレスとは違うな。まるで花嫁衣装みたいだ。
姉様が歩くと、人混みがモーゼの海のように割れ、道ができた。
その道を堂々歩き、壇上前に立つ。
「ステラ、今日は俺から君に言わなければならないことが「その前に」……」
「リリア・ルルリア。わたくしはあなたに言いたいことがありますわ」
「………リリアになんのようですかステラ様」
カツン、カツンとヒールを鳴らして、壇上横のリリアの正面に移動した。
「よくも、ルークスを誑かしたわねこのクソ女‼︎」
そう叫びながらリリアの横っ面に盛大なビンタをした。
こんな展開はゲームにはなかったんだけど。どうしよう?
僕が知らないルートに突入したかも。
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