異世界に行ったら、悪役令嬢の弟になりました。全力で回避せねば!
天笠すいとん
第1話 乙女ゲームクリエイターへの試練
世の中には悪役令嬢なる属性があるらしい。
乙女ゲーなる恋愛ゲームに出てきては主人公である女の子をありとあらゆる手段を使っていじめるというゲスな属性だ。
しかも、厄介なことに悪役令嬢は爵位が高くて金持ち。オマケに一般のモブよりもスペックが高いときた。
実家は偉くて金持ち、見た目は美少女、頭脳明晰、運動神経抜群、カリスマ性がある。
ここだけ見れば誰もが憧れる高嶺の花なのに、言動というか性格がアレな点が多い。
ところで、なぜ僕がこんな話をしているのかというと………
「 許せないわあの女‼︎ か弱いフリをしてルークスに取り入ろうなんて」
「まぁまぁ、落ち着いてよ姉様。相手はただの平民の子でしょ? ルークス王子は姉様と婚約だってしているんだから今さら他の女を選ぶとかあり得ないって」
「それでも気にいらないの! 思い出しただけで腹が立ってきたわ。ふん! わたしはもう寝ますわ‼︎」
ハンカチを噛み締めながら部屋を出て行ったのは、僕の一つ上の姉である。
黄金に輝く髪をドリルツインテールにした公爵家の令嬢で美少女。
平民から貴族までが通う学園での成績は常にトップ。運動は女子の中では上位に入り、ピアノやヴァイオリンはプロからも認められ、時代の最先端を生み出し、学園最大の派閥を仕切る女王様。
うん。はっきり言って化け物じみてるよね。チートだよ。
前世が日本人だった僕はある日交通事故で死んで、目が覚めたらとある貴族のお坊ちゃんだった。
俗に言う異世界転生だった。
男の子だし、ハーレムとか凄い能力を持った勇者とかになれないかなぁ? と思ってた時期が最初はありました、はい。
でも実際は、ちょっと特殊要素があるだけ。
せっかく、転生したんだし二回目の人生を楽しく過ごそうと生きてきましたが、ここにきて最大の悩みが発生。
それが、さっきの姉の件です。
ちょっと負けん気の強い姉は、公爵家令嬢として恥じのないような立ち振る舞いをしてきました。
試験では常に一位を目指し、わからなかった問題はわかるまで徹底的に見直し、ヴァイオリンはプロに弟子入りまでして習得。王家専属のシェフにレシピを聞けるまで通いつめたりと、ドン引きするくらい行動する。
そうして今の地位を築いてきた姉には最近悩みがあるようで。
幼い頃から将来を約束されたこの国の第一王子であるルークス様が最近、学園に通う平民の女子、リリアに夢中だそうで。
きたよ、テンプレ。
生まれ変わってから十数年間、いつかこの時がやってくるのかと待ち構えていた事件。
こなければいいなとも思っていた。
そもそも、国の名前となルークス王子とか公爵家の姉の名前とかになんか聞き覚えがあるとは思ったんだよ。
この世界、『平民少女の下剋上〜悪役令嬢なんかぶっ◯せ!〜』っていう乙女ゲームでしたよ。
内容は主人公のリリアが超イケメンたちにちやほやされながら、嫌な性格の悪女たちを盛大にザマァするゲーム。
イケメンとの絡みよりも悪女を貶める方向に力を入れ込んだクソゲーだよ。
作ったのはもちろん僕だよ‼︎
くそっ!最近のザマァブームに乗ろうとして失敗した黒歴史に転生とかさ、神様は僕のことどんだけ嫌いなんだよ!チクショー‼︎
閑話休題。
このままだと、間違いなくルークス王子は姉との婚約を破棄してリリアとくっつく。
そして、リリアと王子の仲に嫉妬した姉がちょっかいを出しまくって我が公爵家は取り潰しの処分を受けてしまう。
それは困る。
僕は次期公爵家の当主としての輝かしい未来がある。上手くいけば国の大臣とかになって国を牛耳ったりできる。
それに叶えたい夢や野望も。
さて、そのために公爵家の取り潰しは勘弁してもらいたい。育ててもらった恩だってあるんだ。
今後の人生を左右しそうな事件が発生しているが問題ない。
すでに策はうってあるんだ。
さぁ、始めようか。悪役令嬢の弟によるザマァ返しを。
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