猫な彼女とコンビニ

@山氏

猫な彼女は寒がり

「寒い」

 咲弥が俺の横で炬燵に入って体を寄せていた。

「なんか飲む?」

「ココアー」

「はいはい」

 俺は咲弥をゆっくり退かして立ち上がる。キッチンに向かうと、いつも咲弥が飲んでいたココアの粉がなくなっていることに気付いた。

「咲弥、ココアないからコーヒーでいいかな」

「ええ……。ココアがいい」

「じゃあ買いに行こうか」

「やだ。寒いもん」

 俺は炬燵に戻り、咲弥の横に入る。

「ココア飲みたい」

「じゃあ買いに行く?」

「んー、外出たくない……」

「じゃあ飲むものないけど、いいの?」

「取り寄せてよ……」

「今すぐは無理だよ……」

「ええ……」

「何か買ってあげるからコンビニ行こうよ」

「うーん……仕方ないなぁ……」

 咲弥はもぞもぞと動いて、俺と一緒に立ち上がった。布団の上に放ってあったコートを着込み、支度を整える。

 俺もコートを着てマフラーをつけて玄関へ向かった。

「……」

 咲弥が無言で腕を絡めてきた。

「寒いから」

 俺が何か言う前に、咲弥は言う。俺はため息を吐いて家を出た。

「マフラー頂戴」

 咲弥は俺からマフラーを奪い取ると、自分の首に巻き付けた。

「なんでマフラーしてこなかったの……」

「だって啓人が持ってるし」

 咲弥は俺に引っ付きながら言った。

「仕方ないなぁ」

 俺は咲弥に取られてマフラーを取り返すわけでもなく歩いた。

 コンビニまではそう遠くない。家から五分歩けば着いてしまうような距離にある。

「……歩きにくいんだけど」

 腕を絡ませてくっついている咲弥に声をかける。

「いいじゃん寒いんだから」

「まあいいけど……」

 コンビニについても咲弥は離れなかった。

 店内には俺たち以外にも何人か客がおり、俺たちの方をチラっと見た。咲弥は気にせず俺を引っ張って歩いていくが、少し恥ずかしかった。

 咲弥はカゴを俺に渡すと、ココアの粉を二つカゴに入れた。そして、俺を引っ張ってお菓子のコーナーに連れていく。

「何にしようかな」

 キョロキョロとお菓子を咲弥が眺めていた。俺はスナック菓子をカゴに入れ、悩んでいる咲弥の顔を見る。

「うーん……」

 咲弥は悩んだ結果、マシュマロをカゴの中に入れた。

 レジに着くと咲弥は俺から離れた。

「咲弥は他に買いたい物とかない?」

「ないよ」

 会計が終わり他に用事もないのでコンビニを出る。

「さむいー」

 咲弥はすぐに腕を絡ませてきた。

 家に着くと、咲弥はコートを脱ぎ捨てて炬燵に潜り込んだ。

「啓人、早くー」

「はいはい……」

 俺はコートを脱いでキッチンに向かい、お湯を沸かした。

 ココアとコーヒーを淹れて炬燵に戻る。

「あったかい」

 マグカップを両手で持ち、満足そうに微笑む咲弥の頭を撫でた。

「今日はどうするの?」

「……外出たくないから泊ってく」

「じゃあ夜ご飯も買ってこないとだね」

「ええ……」

 咲弥はめんどくさそうにため息を吐くと、俺に寄り掛かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫な彼女とコンビニ @山氏 @yamauji37

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ