第2話 入院初日

事故直後のことは断片的にしか覚えていない。

話を聞く限り、意識はあったそうだが「痛い」としか呟かなかったそうだ。

なぜかは知らないが事故直後は目が見えていなかった。

しかし意外にしっかりしていて、搬送された際に自分がまともに声が出せないと分かると書く動作をして筆談を求めていたらしい。痛いところはありますか?と聞かれるとコンタクトが痛いと書いたそうだ。その後しばらく意識がとんでいた。


発狂しそうな顔の痛みで目が覚める。

訳がわからなかった。

痛みを紛らわそうと暴れるも体は何かで押さえつけられ、誰かが必死でそれを止めようとする。

疑問がいっぱいだった。

なぜ顔が痛い。

なぜ拘束されている。

なぜ腕に点滴が刺さっている。

なぜ目が見えない。

なぜしゃべれない。

なぜ私を止める。


苦痛と疑問ではち切れそうだった。

なぜこんなことをすると紙に書いたらしい。

誰かが優しく説明するも錯乱した私には理解できない。

怒りが湧き出る。

早く解放してくれ。

早く自由にしてくれ。

早く逃がしてくれ。

再び誰かが優しく説明するが理解できない。

そんなやりとりをしていたらしい。


突如母親の声が聞こえた。

病院から連絡があったとのことだった。

それから私に何が起きたのか話した。そうして初めて自分の状況を理解した。私は車にひかれ、顔面を骨折し、くも膜下出血した。痛みの理由は顎の骨折と歯と歯茎を縫い合わせていたから。

母親は泣きそうな声で説明してくれた。


ようやく少し落ち着いた。状況を理解したところで麻酔をかけられ痛みも和らぐ。それから父や兄弟も来たらしいが覚えていない。私も何か書いていたらしい。


入院初日はこんな感じだった。

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入院経験 普通の人 @miyu-midnight

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