第8話 童話 おさるの顔がしわしわで、おしりが赤いわけ
雪山の中、猿のえて吉が寒そうな曇り空を見上げます。今年の冬の訪れは突然で、夏毛から冬毛へ毛が生え替わる前に一気に寒くなってしまいました。ひゅー、ひゅーと冷たい北風が通り過ぎるたびに風の寒さが毛の生え替わり途中の身に染みます。
――寒い。手足が凍えてしまいそうだ。
『神さま、お助けください。このままだと凍え死んでしまいます』
『えて吉よ。そのまま、まっすぐ進みなさい。進んだ先には温かい泉がある。そこで体を温めなさい』
えて吉が神さまの言葉を信じて雪山を苦労しながら進んでいくと、小さな泉が見えてきました。泉からは暖かそうな湯気が立ち上っています。えて吉はすぐに駆け寄りそっそく泉に入ろうと足を泉のお湯の中に浸けたとたん、お湯の熱さに飛び上がってしまいました。凍えた体にはその泉のお湯は熱すぎたようです。
今度は、そーとつま先から足をお湯につけていきます。ゆっくりゆっくり。足の先から、くるぶし、ふくらはぎ。両手で体にお湯を掛けながらゆっくりと体を沈めていくえて吉でした。
――ふー。少し熱めのお湯だけどそれが気持ちいい。ふー。
『神さまありがとうございます』
しばらく泉のお湯につかって、すっかり体の暖まったえて吉はそろそろお湯から上がろうと立ち上がりました。ひゅー。そこに北風が吹きつけえて吉の濡れた体が一気に冷えてしまいました。頭の先の毛は今の北風の一吹きで凍っています。
――ブルブル。寒いー。
もう一度泉に体をつかって温まりなおしです。
えて吉の体はすぐに温まり、お湯から上がろうと立ち上がったとたん北風が吹きつけ、また体が冷えてしまいました。
そうこうしているうちに周りは暗くなっていき夜になったようです。曇り空がいつの間にか晴れて上を見上げると満天の星です。空が晴れたせいか外はますます寒くなってきました。濡れた体では文字通り凍える寒さです。
こうして、えて吉はお湯から出るに出れず、一夜を明かしてしまいました。朝になってもお湯の外は濡れた体では凍えます。
お腹のすいてきたえて吉は、寒さをこらえて泉の近くに生えた木の芽などを採るのですが、すぐに泉に戻って凍えた体を温めなおししなくてはいけません。
えて吉はそういった生活を何日も続けて春までなんとか生き延びることが出来ました。けれども体はすっかりお湯でふやけてしわしわ、お湯の熱さで真っ赤です。
これが、おさるの顔がしわしわで、おしりが赤い理由です。
[あとがき]
昔、おさるさんが雪山の露天風呂に入って気持ち良さそうにしているCMが有りましたが、お湯から出たおさるさんは濡れた体でどうするのか疑問に思っていました。本当はどうしてるんでしょうね。
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