安心と口癖
岸辺蟹
安心と口癖
なかなか寝れない午前2時。どうすれば寝れるだろうと考えていると、安心という子どもじみているが、大事なものがいるという事に気が付いた。
僕の安心とは、君からの愛だと思う。今横目に寝息をたてる君が僕を愛していると証明する方法があるのなら、僕は悪魔に魂を売っ払って一緒に歓びのダンスでも踊れるだろう。
前に似たような事を言って、君はそれだけ僕を夢中にさせているんだと伝えたら、調子のんなって怒られたっけ。
懐かしさと虚しさを覚えたが、無かった事にして首を振る。ほら、無かった事になった。
……。これは君の言葉だったか。
何故だったかもう思い出せないが、僕が嫌な事をされたことに気が付いてくれた君は、僕の耳を塞いで、瞼を閉じさせ、首を下に向け、キスをした。
「ほら、無かった事になったでしょ?」と。
君は本当に僕の性質を理解している、そんな簡単な事で僕の気持ちは晴れ渡るなんて僕自身知らなかった。それをも理解している君も嬉しそうに俯き微笑むものだから、完敗だとこっちも困って笑ってしまう。
君はよく「気の所為だよ」とか、「無かった事に」とかを真顔で言ってくるものだから、こっちもそうかと納得させられそうになる。君の言ったことは本当に成りかねないのだか
ら。まったく、穏やかじゃないね。
これも、君の言葉だ。
僕の身体は君の言葉で成形され直されつつある。君故に、君の為の、僕。素敵じゃないか。存在意義を見つけた上に、認められ、欲されている。この事実は蜜を舐める様に甘く中毒性を含み、取り返しのつかない所まで盲目に君を求めてしまう原因となり、拍車がかかる。
全てが繋がっているのだ。回る。戻る。繰り返す。ループする。そう、行いは全て戻ってくるのだ。
ならば君を思う気持ちも何れ戻ってくるのだろう。そうか、そうだったのか。
これで僕は安心して寝れる。
布団の中の君の手をとり僕は眠りにつく。
うとうと微睡む午前2時。貴方は険しい表情で独り言を呟いて、ふと安心したかのように微笑みながら私の手をとり眠りにつく。穏やかじゃないね、貴方が安心したならそれで良いのだけども。毎晩毎晩何を考えているのでしょう。ここの夜だけループしているかのように、毎日繰り返す。
安心と口癖 岸辺蟹 @kisibe_kani
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます