柏木さんちの諸事情
杏仁豆
第1話
柏木さんちは二階建ての一軒家で、仲の良い親子が住んでいた。
でもある年の瀬に父親が病気で亡くなり、忘れ形見のように弟が産まれたと思ったら、母親が買い物途中交通事故で亡くなった。
残されたのは高校生と産まれたばかりの男の子で。
母方の叔母が引き取ってくれると言っていましたが両親の遺産目当てなことが丸わかりで、後1年で高校を卒業ということもあり、2人で生きていくことにしたのである。
そんな高校生の私の名前を
残り1年、もっと詳しく言うと残り10ヶ月高校生を頑張れば晴れて社会人として就職できる。
高校を中退して就職しても良かったのですが、何かと高卒の方が有利なため、あと1年我慢することにした。
そんな私の日常は1歳になる弟、
必要なものをバックにつめて、佑仁をおんぶ紐で背負った。
佑仁は比較的大人しい方で夜泣きもほとんどしない。母が亡くなった時が最高に酷かったが、小さいからか何故居ないのか理解していないこともあり、今現在は通常時に戻っていた。
保育園は高校とは真逆にあり、通学に時間がかかりる。そのため、いつも早めに出る必要があった。
早めの電車はあまり人がおらず、高校の制服を着て佑仁を背負っていても不躾に見られることはほとんどないから楽だ。
今日も佑仁を背負い電車へと乗り込んだ。ホームの肌寒さが電車の中では少し和らぐ。背中で佑仁がうとうとしだした。電車内は人が疎らで余裕で席に座れた。
佑仁の寝息を聞きながら手すりにもたれると睡魔が襲ってきた。10分は寝れる。私は目をつぶるだけと思いながら意識が飛んでいくのに抗えなかった。
ゆさゆさと肩が揺すられている気がして目が覚めるとそこにはたまに電車で見かける同い年位の、どこかの高校の制服を着た男の子がいた。
いつの間にか爆睡してしまっていたようである。この高校生は確か保育園の2つ前の駅で乗ってきていたように思う。
やばい、寝過ごした。
「あのっ、起こしてくれてありがとうございます!所で今どこですか?!」
高校生の男の子は目をぱちくりとさせた。勢いがありすぎた。
「次、いつも降りる駅じゃないの」
人の少ない、いつも乗っている電車だからか相手も私がどこで降りるのか知っていたようだった。人の動きが分かるくらいこの時間の電車利用者がいないことを表しているように思った。
「ありがとう!」
何も男の子に聞かなくても電車の出入口の電子パネルを見れば書いてある。
どんだけ焦っていたのかと自分に苦笑が漏れた。
ゆっくり電車が止まった。私はいつもの道を歩き、保育園へと向かった。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
保育園に着くと門の所に保育士の佐々木先生がいた。私たち家族の事情を分かってくれる良い先生だ。
「あ、佑亜ちゃん!おはようございます。佑仁君は寝ちゃってますね…。」
「そうなんです。すみません、お願いします」
佑仁は寝続けているため、おんぶ紐ごと佐々木先生に渡した。起きたら私がいなくて泣いてしまうかもしれないが、起こすのは可哀想だし、起きるのを待っていると高校に遅れてしまう。
「佐々木先生、佑仁のことお願いします」
「はい、行ってらっしゃい」
佐々木先生に佑仁を託し、足早に私は高校に行く。
高校には登校10分前にだいたい着く。事情を知っている友達の彩ちんこと
3時30分に下校したら8時までスーパーでバイトをし、そのまま夕飯の食材を買って保育園に迎えに行き、自宅へ帰るのがいつもの生活である。
帰ってからも食事に洗濯、明日の準備と大忙しだ。佑仁は離乳食になってきて、最近は『ゆー』と呼んでくれる。
めっちゃ可愛い。
でも、イヤイヤ期でもあるようで時たまの嫌々に悩まされる。
そんな佑仁を寝かせて授業の復習も済ませ、一緒の布団に入った。
子供の佑仁が暖かくて直ぐに眠りについた。
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