15.ウメ

仕事部屋の隣にある食料部屋。

皆さん片付けが苦手なのか面倒なのか、しょっちゅう散らかって、何処に何が有るのやら。大変よく物が失踪しますので、少し整理していたのです。

「…まさかの干し忘れが出てきました…」

それで出てきたのがこの、壺。

梅干し…になる予定の梅です。

雨雪続きでころりと忘れていました。

「ユリ、手伝って頂けませんか」

「はーい!!」

あの方の娘は今日も元氣に返事をくれまして、重い壺を運んでくれました。

私ですか?物干し台が必要ですので、笊と一緒に持って行きましたよ。総合倉庫から南の庭まで。

…安定の脊椎ダメージ辛い…

「これでいい?」

「壺に赤い実が入っていますので、1つずつ丁寧に笊の上に置いていって下さい。お隣さん同士はくっつけない様に。」

「はーい!」

笊の上には赤く染まった実。

時には赤紫蘇の欠片を纏いながら、幼子の小さな手に拾われて行く。

「梅はそのままでは食べられないのに、どうして桃はそのまま食べられるのでしょうか…?」

「ふに?」

「同じ科なのに不思議ですね…ちょっと写真撮りましょう。お母様もお喜びになるでしょう。」

「しゃしんー!」

未来の梅干しに、未来の帝国をきっと握るだろう子ども。

あの方は喜ぶでしょうか。

赤梅酢で染まった手を綺麗にして、私は一眼レフを構えた。

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今回ネタにしたウメも入りますが、バラ科の果樹は自家不和合性…つまり、木が2本以上ないと実を付けません。自家栽培梅干しを作りたければ、梅の木をひとりぼっちにしないように!

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CAST

・スツェルニーのクライン

・ヴァルトリピカのユリ

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