超人勇者は百合娘!? 夢の異邦人、ユーコとヨーコ

ウロノロムロ

陽子と夕子

「あんた、これ、

まだ終わってないのっ!?」


オフィスに驚きの声が響く。


声の主は仕事中の景山陽子かげやまようこで、

隣の席に座っている同期の

日向夕子ひなたゆうこの仕事振りを見て

今日もまたイライラしているのだ。



「それ、明後日の大事な

国際会議で使う資料じゃない、

間に合わなかったらあんた

ヤバイなんてもんじゃないわよっ」


陽子は勝ち気な性格で

活発で行動的、

思ったことをズバズバ

口にするタイプでもある、

少なくとも表面的には。


その攻撃的な性格が

外見にも表れているのか、

陽子はいつも

生まれつき派手な色をした赤髪を

一本にまとめキツく引っ張り

頭頂部のかなり上で結う、

その為に眉や目がいつも若干

釣り上がっている。



「……大丈夫、です、

……いざとなれば、

泊まって、徹夜しますんで……」


隣の席に座る夕子は

無口で大人しく控え目で

何事に大しても

自分から前に出ることがなく、

何を考えているのか

よくわからないところがある、

そしていわゆる天然でもあった。


見た目も、

眼鏡を掛けたショートカット、

会社でも全く目立たないような

地味中の地味と言える存在。



同じ会社、同じ部署、同じオフィス、

そして隣の席に座った

同期であるにも関わらず、

陽子は夕子のことを

どうにもソリが合わない、

致命的に相性が悪いと思いながら

日々を過ごしていた。


嫌いと言う訳ではない、

かと言って好きかと聞かれれば、

やはりそうでもない、

感情的にはその程度に過ぎない。


しかし、夕子が見せる

理解の出来ない

得体の知れない言動、

マイペースにも程があると

言いたくなるような行動、

そうしたところに

毎日イライラさせられていた。


声も小さくボソボソ喋る為、

何を言っているのか

聞き取れないのが

また余計に陽子をイライラさせる。


そして陽子も若干

イラチな性格であるため

ついついいろんな事に

口出ししてしまいたくなるのだ。



「そっ、じゃぁあんた、

ちゃんと明後日の昼迄にそれ、

終わらせて準備しときなさいよね、

あたし絶対手伝ったりするの

嫌だからね」


「……了解、です」


そしてこの二人には

二人だけの秘密があるのだが、

当の本人達もそのことを知らないので、

秘密と言っていいのかすら分からない。


それを知っているのは

神々だけということになる。


-


就寝前の陽子は、

もう既にベッドの中に足を突っ込んで

目覚ましをセットしていた。


ここ最近ずっと

自分でも不思議なぐらいに

早く寝ようとする。


体がそれ程疲れている訳でもないし、

嫌なことを忘れたい訳でもない。


友達と飲みに行くこともなくなったし、

まぁ元から彼氏はいないので

そこは問題ないのだが、

家に帰ってご飯を食べて

お風呂に入った後、

髪の毛を乾かすのも早々に

すぐに寝ようとする自分が居る。


『どんだけ

寝るのが好きなのよ、あたし』


そう思いながら

目覚ましを枕元に置き、

横になる陽子。



景山陽子は毎日夢を見る。


しかし目覚めた時、

夢の内容は全く覚えていない。


夢を見ていたことすら、

すぐに忘れてしまう。


目覚めた瞬間だけ

何か夢を見ていたことを

認識している。


だからそのことに気づくことも

考えることもない。


そして陽子は

今日も眠りにつく。

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