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―六月、体育祭―
校舎の壁に展示された巨大パネル。
生徒会で作成したパネルだ。
完成した巨大パネルを見上げると、こんなちっぽけな私でもみんなと協力することで、大きな達成感を得ることができた。
体育祭には両親もお兄ちゃんも、創ちゃんも見に来てくれた。
私は体育祭の競技よりも、数ヶ月もかけて制作した巨大パネルやポスターを見て欲しかった。
「凄いな、このパネルのデザインやプログラムの表紙のデザインを礼奈が描いたんだろ」
「うん。みんなのイメージをデッサンしたんだ」
「よく頑張ったな」
「私だけじゃないよ。執行部やボランティアのみんなと頑張ったから、大作が出来たんだよ。創ちゃん、今日ね、打ち上げがあるの」
「打ち上げ?」
「うん、渋谷のハニーってカラオケ店で体育祭の打ち上げをするの。生徒会のみんなに誘われたから行ってもいい?」
「もちろんいいよ。でもあまり遅くならないでくれよ。心配だから」
まるで恋人みたいな口調だね。
すごく嬉しい。
体育祭のプログラムは順調に進み、短距離走で私は最下位になる。運動オンチの私、いつものことだ。
運動部の仮装競技が始まり、各部の顧問が恥ずかしい姿へと変わる。アニメのキャラクターならまだマシな方だ。厳しいことで有名なサッカー部の顧問はゴスロリにコスプレさせられ、かなりキモい。
大爆笑の中、グラウンドの中を行進する顧問と部員。百合野はサッカー部のプラカードを持ち堂々と歩く。
百合野、かっこいいよ。
もう立派なマネージャーだね。
山梨先輩はコスプレした顧問の後ろで、立見キャプテンと大爆笑だ。
それを生徒席から見つめる鈴木先輩。山梨先輩が鈴木先輩の前を通過した時、二人はハイタッチを交わした。
太陽の眩い光りがその手を照らす。
世界一幸せな、ハイタッチ。
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