【8】お姫様と白馬の王子様
嘘つき狼はご用心です。
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【創side】
「バカヤロー!」
敏樹にガツンと拳骨をされ、礼奈は脹れっ面をしている。
「たまたま俺達が原宿をぶらついていたから良かったようなものの、俺達が行かなかったら、お前は今頃あの狼の餌食だ! 骨の髄までむしゃぶりつかれてたんだぞ」
「そんなことないし。もう帰ろうと思ってたし」
「密室で男と二人きりになる意味を、お前はわかってねーな」
「お兄ちゃん。二人きりだからって、何かあるとは限らないでしょう。創ちゃんと礼奈だって、何もしてないし」
それは何もしない俺に文句を言ってるのか? 俺はしたくても出来ないんだよ。このシスコン敏樹が目を光らせているからな。
「敏樹、お前、美貴ちゃんと今からデートだろ」
「あっ、いけね。もうそんな時間か。行かなきゃ」
敏樹は礼奈にもう一発拳骨を浴びせ、足早に立ち去った。礼奈はさらにむくれている。
俺は礼奈に視線を向けた。
「礼奈」
「創ちゃん、ごめんなさい」
「謝るってことは、自分の軽はずみな行動がわかってるんだよな」
「お兄ちゃんには反抗したけど、本当は凄く反省してる。それに……今日の桐生君はちょっと怖かった」
礼奈は俺の腕にギュッと抱き着いた。
心なしか若干震えている。
「俺達が駆け付けなかったら、本当に危機一髪だったんだよ」
「本当にごめんなさい」
「わかってるならいい。家まで送るから」
「うん」
俺は礼奈に手を差し出し、ガッチリと手を握る。二人で電車に揺られ、礼奈の家まで送り届けた。
「お帰りなさい。礼奈、随分遅かったのね。遅くなる時はちゃんと連絡しなさい。心配するでしょう。あら、創ちゃんと一緒だったの? 夕飯まだでしょう? 創ちゃんも上がりなさい。一緒に夕飯どう?」
「はい、ありがとうございます。でも俺は今からバイトがあるから」
「バイト? まあ大変ね。創ちゃんには礼奈の家庭教師も引き続きお願いしたいのよ。高校生になって、気分が浮わついてて困ってるの」
確かに、その通りだ。
花のJKになり完全に浮かれている。
羽が生えたみたいに、あちらこちらを自由に飛び回り俺も気が気じゃない。
「創ちゃん、ビデオ店でバイトなの?」
「うん。どうしても買いたい物があって、貯金してるんだ」
「貯金してるの? 凄いね」
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