第12話 見ないで!怪奇シリーズ 中庭の近藤
「とりあえず今いる中庭のゴミを片付けていくぞ。後あんまり勝手な行動はするなよ!」
「何勝手に仕切ってるのよ。隊長はアタシでしょ!」
器用な尻尾で、尻を叩かれる。まぁまぁ痛かったが、これだけの元気があればもう心配はないだろう。
それで中庭は放課後にも関わらず、ベンチや芝生などまばらな所で多くの生徒達が雑談や昼寝に興じていたり……したんだけど。
いつものパターンという様に俺達来た瞬間には、前回同様散っていった。
それでも気にすることなく残っている生徒も僅かながらにおり、背中からは視線と意識を感じながらの作業。
とりあえず各々で、中庭のゴミを回収していく。空の紙パックのジュースのゴミや、パンの袋、何故か野球ボールまでが乱雑に散らばっていた。
「ここの掃除ってまともにしてないのか? もしくはこの学園のモラルが低いか……」
そう言えば学園の清掃活動を行うと四天王寺に報告しに行った時、校内の掃除は業者に任せていると言っていた。恐らくこの様子を見るに、毎日行っているわけではないのだろう。
そんな中、校舎から見えるこの中庭のせいか、窓からこちらを面白そうに見ている生徒が次々と集まってくる。
「全く、見せもんじゃねぇんだぞ」
そんな視線を無視して作業を続け――。
数十分後――ゴミは袋半分を埋める程集まった。
落ちていたくしゃくしゃのティッシュトングで拾うと、何故か笑顔で尻尾とツインテールを振ったランがこちらに走ってくる。
「ねぇハヤタ! 凄いの見つかっちゃった!」
「どうせくだらない――」
そう言って見せてきたのは、避妊具……コンドームの空いた袋。銀色のパッケージは、薬局のコーナーでよく見る奴だ。
「これ、もう開いちゃっているけど、何か不思議な道具なんじゃない? 極薄、とか意味深な数字とか書いてあるし!」
「…………」
目の前のこれをどう説明したらいいのだろうか。
というか、別の惑星にはこの形状の避妊具って存在しないのか?
「あ、なんですかそれ」
アコまで集まってきてしまう。珍しそうにその袋を見る限り、彼女の故郷もコンドームはないらしい。
というか……そもそもここでそれがあったって事は、誰か学校で使ったって事だよな?
「ねぇ、これなんなの? 地球の道具なんでしょ?」
「ワタシも気になります。どうやって使うんですか?」
少年の様に目を輝かせて俺を見上げる二人。
こんな二人にどう教えてやればいいのか、エロコンテンツを知らない息子が興味本位で、聞いて来た質問を世の父親はどう返しているのか知りたくなってくる。
すると、桜までもがそれを見に俺の元にやって来た。
「桜は知ってますか、これ?」
「ノー。ウチも見たことはない。では――」
どこからか聞こえてくる電子音と、桜の目から放たれた緑色のレーザー。
かなり嫌な予感が――。
「――分析完了。これは、コンドームと呼ばれひに――ふごごごごっ!!」
いや、そんなんだと思ったよ! 超高性能ロボットだしな! ただ、こんなタイミングで機能を発揮するなよ!
「こ、これは近藤さんっていう人が作った最新鋭の……そう、消しゴムだ。誰か開封したまま袋だけ落としたんだろ」
ゴムだけなら間違ったことは言っていないし……。
後は、こいつらが信じてくれるかどうかだが……。
「へー、そうなのね。知らなかったわ」
「消しゴムにも色々種類があるんですね」
感心した二人は、数秒間それを見てはゴミ袋に入れ、そのまま別の場所に移動する。
ある程度離れたのを確認して、塞いでいた手を放してやる。
「――ぷはぁ……、隼大ヒドイオトコ」
相変わらずの無表情だが、何となく雰囲気なのか睨まれているのが分かる……。
「お前が余計な事を言おうとしたからだ、全く……」
「あの二人だってもう大人。それくらい別に知っていてもおかしくない」
「いや、別に知っているかどうかじゃない。この後、色々気まずくなるだろ」
あそこでこれを避妊具だと教えれば、お互い変な意識をして口を聞かなくなってしまう可能性がある。特に純粋な二人は余計混乱するだろう。
「つまり、コンドームの話が平然と出来るウチは大人って事?」
「それはない」
絶対にない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます