第3話 商人の金稼ぎ

「おい、お前! あそこ見てみろよ!」

「な、なんだよ……って、なんだよあれ……」


 商人の格好をした男性たちが山の方を見て驚いている様子。


「火を纏った龍なんて聞いたことねぇぞ……」

「あぁ、俺もだよ……」


 商人たちの視線の先には火を纏って天に駆け上がって行きそうな巨大な龍。


「あっ……消えちまったな……」

「あぁ、そうだな……」


 商人たちが眺めている先に火を纏った龍が突如出現した思えば、すぐにその姿は消え去って、見えるのは立ち上る煙筋が一本だけ。


「なぁ……あそこ行ってみねぇか?」

「はぁ! お前何言ってんだよ……危険すぎるだろ……」


「いやいや……俺は金の匂いがするぜ」

「またそれかよ……前もお前はそうやって駆けつけて行って死ぬかけてたじゃねえかよ……」


「それとこれは別だ……今回はマジだ……今回は俺の勘がビンビンとしてやがる……」

「いや……俺は嫌だぞ……絶対に関わるべきではない……」



「そんなことを言うなよ……ダメそうだったらそのまま逃げればいいだろ?」

「いやぁ……お前は少し楽観的すぎるんだよ……だからいつまでもお前は貧乏商人なんだよ……もっと冷静に頭を使えよ……」


「そうだけどよぉ……好奇心ちゅうもんには抗えれないものなんだよ……」

「好奇心旺盛ならもっと勉強しやがれよ……この貧乏商が……」


「うっせぇよ……お前も人のこと言えんだろ。貧乏奴隷商めが」

「ハハ。何言ってんだよ……最近は奴隷はかなり高く売れるんだぞ? 特に闘技場に出せそうな奴はかなりの値がつく」


「ま、マジなのか? 確かに最近はお偉いさんたちは闘技場にハマっているらしいしな……ちなみにどれくらいなんだよ?」

「まぁ、最近の傾向からすると強そうな奴じゃなくて、弱そうなやつを闘技場に出して惨たらしく殺すのがが流行りらしくてな……だから小さな子供とかは結構高く売れるぞ。

子供だと大体、100,000セリスくらいじゃねえか?」


「マジかよ? めちゃくちゃ高いな、それ……でも、それってかなり酷くねぇか?」

「まぁな……貴族様たちが考えてることは理解できんよ……でも、俺らみたいな低俗が真向から歯向かうこともできんからな……」


「まぁ、そうだよな……俺たちもこれ以上貧しくなって借金を抱えるようになったら奴隷行きになるからな……」

「そうだな……」


「まぁ、そんなことはいいとして……あそこに行ってみねぇか?」

「……まぁな。仕方ねぇ……でも、金目のものがあったとしても分け前は半分ずつだからな?」


「あったりめぇよ! じゃあ、行こうぜ!」

「あぁ! って、お前が先に行けよぉ!」


「…………いやぁ」

「なんだよぉ。お前ビビってんのかよ、お前が先に言い出したんだからなぁ……」


「あぁ……わかったよ……」

「んったく、情けねぇやつだな……」


 貧乏商人たちが山を駆け上り煙柱が立っているところに向かって歩いていく。


「ハァ。ハァ。ハァ。もう無理だぁ……」

「おいおい……お前、本当に情けねぇなぁ……あと少しだろ?」


「ちょっと休憩だ……」

「なんだよぉ……お前が行かないなら俺が先に行くぞ?」


 と、貧乏奴隷商が抜け駆けする形で……

 煙が立っている場所へと向かう。


 と、そこには……


「なんだよ……こんなサイズのジャイアントベアなんてみたことねぇぞ……」


 こいつおそらく4mは超えてるな……

 こいつの皮は完全に焼けてしまっているが、肉と骨だけでも1,000,000セリスは稼げる。

 1,000,000セリスもあれば1年間は何もせずに遊んで暮らせるぞ……


「とりあえず、こいつを消火しておかねえとな……」


 貧乏奴隷商は自分の上着を近くの小川で濡らし、ジャイアントベアから出る火を消そうとするのだが……

 

「ちぇっ……しぶとい奴め……」


 となかなか炎が消えず消火に苦労していたところ


 バシャン。


「ふぅ……これでいいか?」


 さっきまで一緒に来ていた商人が体力を回復させたのか、樽に水を汲んで煙が出るジャイアントベアに思いっきり水をかける。


「あぁ。サンキューな……それにしてもこいつデケェな……」


「あぁ。だから言ったろ? 金の匂いがするって! これ普通に売ったらどれくらいになると思う?」


「あぁ……そうだなぁ……低く見積もったとしても1,000,000セリスはあると思うぜ?」


「やっぱりお前もそう思うか?」


「あぁ、それにしても、——————

ん!? なんだこれ?」

「ん……どうしたんだ?」


「おい! これを見てみろよ……」

「あぁ!? はっ!? なんだこいつ……」



「ガキだな……どうしてこんなところに……」

「さっきこの場所に火の龍がいたよな?」


「あぁ、そう言えばそうだったな……じゃあなんでこのガキは火の龍に殺されたのか?」

「いやいや、違うぜ……よく見てみろよ……こいつまだ死んじゃいねぇ……」


「本当だ……生きてやがる……かなり火傷が目立つんだが……」

「あぁ……でも、このガキなら売れるよな」

「ああ、それもさっき言った通り100,000セリスはあると思うぞ?」


「マジかよ……確かにこいつ男にしては小柄だし、可愛い顔してんな……」

「だろ? お偉いさんたちはこう言う少年が好みなんだよ……残酷なもんだろ?」



「あぁ、でも、やっぱりこんな子を売るのは俺にはできないな……うちにも同じくらいの息子がいるし……」

「まぁな……でも、生きていくには仕方がないことだってあるんだよ……」


「まぁ……とりあえず、このガキとジャイアントベアを運ばないとな……」

「あぁ。そうだな……」

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