限りある時間

メトロノーム

限りある時間

あの日、あなたと出逢ったのは、ただの偶然。

必然でも、運命でもなく、ただの偶然だったの。


ずっと孤独を生きてきた私。

そんな私が、知らない場所へと足を踏み入れてしまった時。

助けてくれたのは、あなたでした。


「大丈夫」たったその一言に救われた。

あなたの笑顔は優しくて、温かくて、太陽のようで。

瞳に映るもの全てに、光を照らしてくれたの。


差し出された手を握れば、握り返され。高鳴っていく鼓動。

初めての感情にどうすることもできず、私は目をそらし気づかないふりをしていたの。


それがどれほど幼い行動だったのか、知らずにいたんだ。

あの時までは...


限りある時間の中で。

私のこの想いは、どれくらいあなたに届いたのだろう。

あなたの想いは、私に届いていたはずなのに、気づこうとしなかったんだね。


何度も何度も呆れることなく、届けようとしてくれた想いに、私はどうして気づけなかったのかな。


今さらなのは分かってる。

この想いがもう届かないこと、届けられないこと。


けど、私は届くと信じて伝えたい。

届いてほしい、私のあなたへの想い。

「好き」その一言を...


あなたもずっと孤独を生きてきたんだと、そう知ったのはあなたがいなくなってからでした。


優しいあなたは私の話を聞いてくれていたけど、自分の話をすることはなかったよね。

いつも私だけが話をしていた。


それが何を意味するのか。

私はあなたの優しさに甘えてばかりで、話を聞こうとしなかった。

聞いてあげられなかったんだ。


私がもう少し大人だったら、あなたが私を救ってくれたように、全てを救えていたかもしれない。


握られた手の温もりも、優しい笑顔も、抱きしめてくれたときの体温も。

それがどれほど大切なものだったのか、気づかずにいたんだ。

あの日までは...


限りある時間の中で。

私のこの幼さは、どれくらいあなたを苦しめていたのだろう。

あなたは苦しみも悲しみも、全て一人で抱え込んでいたんだね。


何度も何度も苦しみながら、伝えようとしてくれた想いに、私はどうして耳を傾けなかったのかな。


今さらなのは分かってる。

あの時間がもう戻ってこないこと、戻らないこと。


けど、あなたは伝わると信じていた。

伝えたい、あなたの私への想い。

「好き」その一言が...


私の未来にあなたがいて、あなたの未来にも私がいると、そう思っていたの。

でも、二人同じ気持ちだったのに。

私の未来にあなたはいなくて、あなたの未来にも私はいなかった。


いつか届けばと、伝えられたらと、自分の胸に秘めていた想いは。

言葉にすることなく、まだ自分の胸に秘められている。


あなたでなければこの想いは意味を持たないと、そう気づいたときにはもう遅かったんだ。

永遠に続くと思っていた時間には、限りがあったんだね。


限りある時間の中で。

私のこの想いは、どれくらいあなたに届かなかったのだろう。

私の想いはあなたに届いていないはずなのに、傍にいてくれたんだね。


何度も何度も嫌がることなく言葉にしてくれた想いは、もうあなたから聴くことはできないのかな。


今さらなのは分かってる。

あの言葉がもう聴けないこと、聴かせてもらえないこと。


けど、私は偶然だと信じたくない。

あなたと出逢えたのは必然で、運命であったと。


信じたい、私とあなた二人の想い。

「愛してる」その一言に...



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