第2話

「さて、神罰が下るかどうか、確かめさせてもらおうか」


 酷い!

 あまりにも情けがなさすぎます。

 言葉では神意を確かめるためといっていますが、実際は見世物にする心算です。

 神官や王族だけでなく、貴族や庶民まで集めて見物させています。

 特に酷かったのはアンナでした。


「ただ待つのでは殿下も御辛いでしょう。

 軽食と飲み物を用意いたしました。

 どうぞお食べください」


「ふむ。

 せっかく用意してくれた物を無駄にするのは申し訳ないな。

 だが余だけが飲食するの気が引ける。

 王太子である余が許可する。

 皆自由に飲食するがよい」


「「「「「有り難き幸せでございます」」」」」


 最初から、私達が鳥に喰い殺されるのを、飲み食いしながら見物する心算だったのでしょう。

 集まっていた全ての貴族が食事の用意をしていたのです。

 アンナの言葉は最初から予定されていた茶番なのです。

 私は心の底から怒りが沸き上がって来ました!


「殿下。

 神の御意思を予想するのも殿下の御役目だと思うのです。

 そうですね、民に金を賭けさせて神意を当てた者に褒美を与えてはどうでしょう?

 一部は浄財として国のために使う事も可能です」


「ふむ、そうだな。

 王族として、率先して神の御心を考えるのは大切だな。

 神の御意思を見事に予測した民に褒美を与えるのもよいだろう。

 掛け金の一部を国のために使うのは、神々も御喜びになられるだろう。

 だが具体的にどうするのだ?」


「最初に神罰が下る者が誰かを予想します。

 さらに最初に神罰が下る場所を予想します。

 具体的に申し上げれば、神鳥が最初についばむのが目なのか、それとも鼻なのか、意外にも唇なのかを予想するのです」


「ふむ、分かった。

 そこまで神の御意思を予想できたら褒美に値するだろう」


 あまりのも罰当たりな言動です!

 私達がどこから鳥に喰われるかを、神の御意思として賭けにするのです。

 しかも一部を国のために使うと言っていますが、王太子の事です、過半を自分の遊興費にするのでしょう。


 いえ、そんな事は些細な事です。

 王太子やアンナの本当の目的は、私達を怯え苦しませる事なのです。

 だからこそ全ての会話を、必要以上に大声で話しているのです。

 鳥刑のために刑場の柱に括り付けられている私達に聞かせて、怯える恐怖に慄く姿を見物したいのです。

 大きな声で話すたびに、私達の方を見て嫌らしく笑っています。


 神様!

 どうか神様!

 彼らにこそ天罰神罰を下してください!

 王太子を、いえ、全ての王族を皆殺しにしてください!

 いっそこの国を滅ぼしてください!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る