第11話 な、なに言っているのか分からねーと思うが、ありのまま今起こった事を話すぜ!

現場について、車を降りる。さくら組の奴らが点呼と現場点検となどを済まして作業に取り掛かるのを敷地の外から最上ちゃんと眺めていた。

最上ちゃんはずっと顔色が悪い。


「顔色が悪いけどどうしたの?具合悪い?」

「…なっんにも感じない加神さんが羨ましいです。いいですね」


なんかトゲがあんな…仕方ないじゃないか。まったく分からないんだから。

そんな事を考えていたら、現場の方が騒がしくなった。


「Ghost!!Ghost!!!」


真っ青な顔したスタッフが腕を指さしながら叫んでいる。どうやら腕を掴まれたようなのだ。ほほう。で、おっちゃんはどうすんのかなー?と思って眺めていると





「ファイト!!」






はっ?!


「ノー!ノーノーノー!!ゴースト!!ゴーストゴースト!!」

「ファイト!ファイト!!」


激しい応酬が続く。周りのスタッフも手を止めて成り行きを見守っている。


「ゴゴゴゴゴーーースト!!!!!!」

「ファファファファファイーーーッ!!!」


スタッフとおっちゃんの声が良く晴れた空に高らかに響いた。


「ぶっはぁ!!!」

「え?!加神さん?!」


腹いてぇ!なんだこれ。コントじゃねーか。あーーやっべぇ。ウケる。さいっこー。


「ちょっと加神さん!笑いすぎですよ」

「これを笑わずに見ていられる最上ちゃんがすげぇよ」

「勝手にちゃん付けで呼ばないで下さいよっ!」

「あー。めっちゃ笑った。腹いてぇ。最高。最上ちゃん視えるんだよね?どうなってんの?ここ」

「涙流すまで笑わないでくださいよ。ここ、すっごいです。霊道だけあってここ一帯が淀んでてあまり良くないんですけど、この洋館をまっすぐに貫いているのでうっじゃうじゃいますね。

ていうか、改めて見ると…私たちの周りだけ避けるようにいないですね…やっぱり、これって…」


最上ちゃんが自分の世界に入ってブツブツ言いだした。言ってる事の半分も分からんけど、まぁ、すっげーいっぱいいるってことだけは分かった。百鬼夜行みたいな感じか?視えねーからよく分からんな。


「ゴゴゴゴゴースト!!」

「ファファファファファファイッ!!」


あ。まだやってら。しかも、その人数が増えてる。本人たちは必死なのは分かるけどギャグだよなぁ。これ。


「なぁ。これ、通常の対処法?」

「え?あぁ…そうですね。基本的に、監督は激を飛ばすことと、スタッフのケアですかね。まぁ、あとはすぐ自主休憩をしちゃうから、その監視ですねぇ」

「いやー。すっげー破壊力のある光景だな、これ。めっちゃウケる」

「笑いごとじゃないですよ。必死なんですからね!」

「そうなんだけどさぁ…」

「よし。じゃあ、今回の見学の本当の理由、検証に移りましょうか。私の中ではちょっとずつ確信に変わってきてますけど」

「は?」

「加神さん、彼らのとこにいって下さい。指示は別途出します」


最上ちゃんに言われるがままに彼らに向かって歩く。歩くごとに、騒ぎから動揺?に変わるのが分かる。なんだよ。どうしたんだよ。俺が入っちゃまずかったんかよ。


「最上ちゃーん!こっからどうすんのー?」

「ほとんど終わりましたー!」

「はぁ?!」

「お、おい!加神!!!お前なにしたんだよ?!」

「うおっ!」


おっちゃんにガッと腕を掴まれた。


「な、なんすか?俺べつに何もしてないっすよ。最上ちゃんに歩けって言われたから歩いてきただけっす」

「お前が歩いてきただけで、ここら辺にうじゃうじゃいた奴らが消えたんだよ!ついでにそいつの腕を掴んでたやつももういねぇ」


な、なにいってるか分からねーと思うが俺も全然わからねぇから、ありのまま話しても誰にもなにも伝わらねぇ!だから…


「最上ちゃーん!」


たーすけーてアーンパー…最上ちゃーん!


「最上ちゃん、こりゃ一体全体どういうこった?」

「実はですね、この加神さん…お化けを消す?飛ばす?力があるんですよ。何しているのかどうなっているのか私にはさっぱりなんですけどね。

本社で似たようなことが起きたので、もしかしたらと思って、見学兼ねて検証しにきました!期待させて違ったら申し訳ないと思って、蒲生さんにもお伝えできなかったんですけど…ごめんなさい」

「い、いや。それは全然きにしねぇけど…加神、お前ナニモンだよ?」

「んな事いわれても俺も皆目見当つかねーよ!こちとらこの歳までオカルト系にはとんとご縁がなくってですね!」

「結局わけが分からねぇが、とにかくおめぇスゲーよ!」

「お、おう。さんきゅー」


おっちゃん以上に俺が訳わかんねーけど、褒められてるからとりあえず受けとっとくわ。

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