事故物件破壊屋

ちゅらろま

第1話 序章

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」


 我慢しても口元がもぞもぞしちゃって、たえらんないから思いっ切り笑っちゃう!

 嬉しくってたまんない!欲しくてたまらなかった自分だけの部屋!!!しかも2階!体ももぞもぞしてじっとしてらんない。気づいたらぐるぐる回転しながら笑い声を上げてた。


「陽ちゃん…」


 笑いを噛み殺したような声で呼ばれた。ドアの方を見ると、お母さんが僕をおかしそうな顔で見て立っていた。


「あ!ちゃんとノックしてよぉ〜!」

「ごめん。ごめん。お昼のおソバ、用意できたから食べちゃおう?」

「うん。分かったー!」


 僕はお母さんと一緒に1階のリビングに下りた。


「陽、自分の新しい部屋はどうだ?」


 リビングに着くとお父さんが既にテーブルについていた。


「最っっ高!勉強も頑張れるよ~!」

「まったく調子がいいな、陽は。でも、やる気が出たのは良いことだな。さっ、お昼食べてさっさと片付けしちゃおうな」

「うん!」


 前の家は団地で、自分だけの部屋がなかった。新しい戸建ての家は部屋数が倍以上もある。お母さんたちはそろそろ僕の兄弟も…とか言ってた。

 そこそこ広い庭もあるし、弟ができたら庭で遊べて楽しいだろうな。


「この辺りは駅からちょっと離れてるが相場よりも安いし、良い買い物したな」

「そうね。でも、陽ちゃんは学校が遠くなっちゃったし団地でのお友達とも離れちゃったけど…」

「大丈夫だよ!自転車買ってもらえれば団地までそれで行けるし、みんなも新しい家に遊びに来たがってたもん!」

「そう?じゃあ、さっさと片付けてお友達を招待しないとね?」

「うん!僕も自分の部屋を自慢したいし~」


 ニシシシ、と笑って言うと


「陽ちゃんたら」


 お母さんたちがおかしそうに笑った。


 そう。

 全部ぜんぶ、最っ高だったんだ。引っ越してきた時は…。

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