未送信メッセージ
ぴで
前半 新城の気持ち
今日も私はとりとめないやりとりを同級生の男子とLINEで連絡している。
学校の小テストが難しかっただの社会の先生のべらぼーという口癖を何回言っただの本当に下らない内容だ。
しかし私が言いたいのはそんな事じゃなかった。
好きです。付き合ってほしい。
ただそれだけだ。ただそれだけなのに私はその事を言えずにいる。
ましてやそんな大事な事をLINEでしていいのだろうかと悩ましく思っている。
文章を作ったり消したりしてすでに夜中の3時…今日はもう寝よう。
『キーンコーンカーンコーン』
学校は放課後をお知らせするチャイムが鳴っていた。
私はもちろん寝不足、おまけに教室はストーブで暖かかったので寝落ちしそうなのを我慢して授業を乗り切った。
「新城(しんじょう)どうした?なんか眠そうだな」
「…ちょっと眠れなくてね」
(あんたのせいだっての)
私が、夜も悩ましく寝れなかった原因の昨日のLINEの相手、古室(こむろ)が不思議そうに見ていた。
「俺がお前に連絡したの十時ぐらいだったか?お前そんな遅くまで起きてたのかよ」
「まぁね」
私が好きな古室は同級生で普通に話せる男子だ。悪く言えばどこにでもいそうなヤンチャっぽいアホそうな男子。
こんな男子を私は好きになってしまった。
好きになった原因は惹かれてしまったというか勘違いというか、とにかくなんだか好きになってしまったのだ。
あれは私が高校入学して1日目の事だった。
入学式は午前中で終わったので私は校舎を見回ろうとウロチョロしていた。
一年生のクラスは四階なので上は屋上だった。
この学校の屋上はなんと漫画の世界のように生徒も入っていいみたいで、私は好奇心を抑えきれず、屋上に登ってみた。
屋上に出てみるとなにやらズクズクDJがスクラッチし、わかりやすいテンポでビートを刻む音楽が流れており、周りを見回すと一人の男子がブレイクダンス?をしていた。
その男子のダンスは曲のテンポにうまく乗っており、その曲を知り尽くしていなければ出来ないと思わせるダンスだった。
しばらく眺めているとこっちに気づいた男子が私に視線を向けた。
「誰だお前?」
私は間近でブレイクダンス?というものを見た事がなかったのでつい思った言葉をそのまま伝えた。
「歌ってたみたい」
「え?どういう事?」
「さっき流れてた曲に声じゃなくて、体で歌ってたみたいでカッコ良かった!」
「…」
「あれっ? 伝わらなかった?」
「お前誰?」
「私は1ーAの新城、君のネクタイの色も一年だよね?何組?」
「…俺も1ーA、古室だよろしく」
こんな屋上で新たな出会いがあり、私は高校の新生活にワクワクしていた。
古室はちょっと無愛想だがダンスを見る限りかなりうまかったと思うので、意外と努力家なのかもしれない。
そんな古室が休憩時間や体育が始まる前にダンスをしている姿を目で追いかけるようになっていた。
初めはただあの歌っているようなダンスが見れるからだと思っていた。そんなある時。
「新ちゃんってさ、いっつも古室見てるよね」
新生活で仲良くなったニューフレンドにそう言われた。
「え? 私が? そんな事ないよ」
「そう? いっつも見てるけどな、好きなのかと思った」
好きなのかと思った。
え?私って古室が好きなの?
そう言われて私はいつの間にやら頭の中は古室が好きなのか?という疑問が駆け巡り、いつやら好きかもしれない、好きかも、実は初めて会った時から好きだったかも、と変化した。
ただダンスがカッコ良かったから?友達に言われてそんな気がしたから?それとも初めて会った時から好きだった?どれも違うような気もするがどれも当てはまるような気もしてくる。
そして今では一応好きだという気持ちになり、告白したいけど出来ずに今に至る。
今日は眠いし体調は万全じゃない、仕方がないから告白は明日にしよう、明日にしようといつもと同じ今日を過ごすはずだった。
しかし。
「おーい古室、お前呼んでるやついるんだけど」
同じクラスの男子が入り口から古室を呼び、その廊下には一人の女子がいた。
かなり可愛い、古室に一体なんの用だろう。
「新城、悪いけど先帰っててくれよ、なんか呼ばれてるし」
そういい古室は女子のいる方に向かい、周りの男子達がヤジを飛ばした。
いよいよ古室にも彼女ができるだのできたら俺にも紹介しろだの馬鹿な事ばっか言ってやがる。
え?あんな可愛い子が古室に告白を?
あんな可愛い子に私なんかかないっこない。
古室と女の子はどこかへ消え、私は追いかける事もできないただの友達なので、落ち込み帰るしかなかった。
下駄箱に降りると放課後なので、周りは騒々しかった。
そんな中私は胸が締めつけられたような悲しい気持ちになった。
古室と付き合えなくても言えば良かった。LINEでも直接言ってもいいから自分の素直な気持ちを伝えればよかった。
もしあの子と古室が付き合っちゃったらもう伝える事ができないんだ。
そう思うと涙が止まらず、泣くしかなかった。
「しかも雪降ってきてるじゃん…ぐす」
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