第59話

主要人物への挨拶を終えていき残るはアイーヌン男爵だけとなった。


「アイーヌン男爵、此度は申し訳ないことをした。」

「申し訳ありませんアイーヌン男爵。私がモーベル王子の手綱をしっかりと握っていればこのような事態は起こりませんでしたのに。」


そう言い俺ととミーシェルはアイーヌン男爵に頭を下げた。


ザワッと会場が驚きの声に包まれた。


「嘘でしょ、今回のパーティーは不本意と言っているようなものよ。」


「何を考えているのだ。あの新米公爵はやはり夫婦揃って子どもということか。」


外野は好き勝手言っているがアイーヌン男爵は迷惑を被ったのは紛れも無い事実である。


そもそも世襲性が一般的な貴族社会において基本的に位の高い者が次の次期当主となる。この古臭い慣習のことを考えれば王子が次期当主となれば既に決まっていた次期当主、男爵の長男は路頭に迷う可能性すらあった。そのことを踏まえて謝ったのである。


「アーレギオン様、ミーシェル様どうか頭を御上げ下さい。私目のような下々のものに一々頭を下げては示しが付きませぬ。」


「それでは困るんだ。国民が路頭に迷い子どもが死ねば責任は我々にある。それと同じことだ。どうかこの謝罪を受け入れてくれないか?」


俺は頭を下げたままそう喋った。

その真摯な姿勢に会場の観衆は文句が言えなくなったのか押し黙った。それほどまでに真っ直ぐで綺麗な謝罪だった。斜め45の絶妙な角度で曲げられた腰はとても美しく首から下に至るまで鋼でも入っているように見えるくらいに固定され全体のシルエットをより強調したsya za i はJapanese do ge zaに匹敵する魅力を醸し出していた。


「そこまで言われては私は謝罪を受け入れるしかないじゃないですか。しかし時にアーレギオン様今度私とお茶をしてくれますかな。それが謝罪を受け入れる条件でございます。」


「わかった。お茶に誘われたいときは呼んでくれ。」


今の言葉はひとつ貸しをくれという意味である。もちろん俺はそれを知っていて了承した。つまり男爵は公爵にお願いを1回できる人物ということ。今回の攻撃材料となっていた男爵を下手に攻撃できなくなりむしろ矛先は公爵に向くよう仕掛ける。仕事は増えるが馬鹿は釣れる頭脳プレイである。とは言ったものの肝心の敵は潰せないだろうが明確な線引きはできるというある意味一石二鳥な作戦であった。考案?ミーシェルに決まってるよ。


そんなこんなで無事にパーティーは終わった。


「ふえ?」


愛らしく料理を食べていたラピスの頭をグリグリして


「いたーーーい!!」

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