キャラクターの人格・価値観について
今川幸乃
キャラクターの人格・価値観について
個別の作品がどうこうという話ではなく、こういう視点からキャラクター造形や描写を考えてみませんかという話がしたいだけです。
突然ですが、皆さんは物語の登場人物に「人格が感じられない」もしくは「こいつ人としておかしい(そういう意図で描かれているキャラはのぞく)」と思ったことはありませんか?
これにはいくつかのパターンがあります。
① 単純に描写不足。
② 作者の力量不足でキャラクターが展開に沿って動かされているように見えてしまう。
②の派生かもしれませんが、唐突に残虐になったり唐突に優しくなったりするキャラクターもいますよね。この二つは作者が気づいているかはさておき、単に修正すればいい問題なので流します。
③ 物語においてどうでもいいキャラだから。
例えば「うわー、あっちに魔物が出た!」と叫ぶだけの村人とかですかね。これも特に問題はないので触れません。
④ キャラクターは一貫しているし、別にサイコパスとかでもないけど人間味を感じない(もしくは違和感を感じる)
今回テーマにしたいのはこれです。
いきなりこんなこと言われても何のことだか分からないので例を挙げようと思います。当然ですが例に該当している全てのキャラクターがだめという訳ではありません。描写や説明によりそう感じないパターンも多くあります。
例① ふとしたことで主人公に惚れてから、四六時中全て主人公のために行動している(もしくは考えている)ラブコメヒロイン
例② ファンタジーとかで主人公に助けられた奴隷(もしくは虐げられている種族など)が主人公に絶対の忠誠を誓う
何が受け付けないのかを自分の中で考えてみたところ、まず単なる好き嫌いの問題がありました。私はどちらかというと自分の弱いところや醜いところを肯定してもらいたい派なので、無闇やたらと持ち上げ来る系のヒロインがあまり好きじゃないというのが一つあります。
で、それを差し引いたとして残る違和感が何なのか考えてみたところ、例に該当しているキャラクターは主人公という要素を除くと人格が成立しないんですよね。
主人公と会わなかったら一体どうやって生きていたのか。別の男にぞっこんになるのか、主人公と出会うまで他の人には興味を示さないのか。主人公がいないところではどんな風に生活しているのか。
突発的な一目ぼれとかを除けば人が人を好きになる(恋愛であってもなくても)には何か価値観があって、それを満たしているから好きになると思うんですよ。たまに価値観をレベルの深い関係になることもありますが、人の価値観を変える過程までが描かれているのは本当に稀だと思います。
例えば、ラブコメとかでよくあるのは完璧系ヒロインが
「皆自分のいいところばっかり見てくれて素の自分を肯定しくれないことに疲れている」→「主人公、偶然素の状態のヒロインと会って肯定してくれる」→「好きになる」
という流れだったら分かるんです。
そのため、「主人公が好き」以外の価値観が存在しないヒロインを見てると違和感を感じてしまいます。
②は助けられ方とかにもよるので一概には言えないんですが、奴隷として扱われていて主人に忠誠を誓うしかなかったところを助けてくれた主人公に忠誠を誓うというのは依存先が変わっているだけで、誰かに依存しないと生きていけないという根本の問題が解決されてる訳ではないような気がするんですよ。
いや、そこから奴隷ちゃんの心を本当の意味で自由にする物語とかが始まるなら別にいいんですが、主人公に依存させて「ふう、助けたぜ。いい仕事したな」みたいな感じになってると違和感があります。
「じゃあ依存と、自由意志で主人公と行動を共にしているということの境界は何なのか」というツッコミが入るかもしれませんが、それがさっき書いた「主人公を抜きにした価値観が存在するか」というところに着地するんだと思います。
例えば、奴隷ちゃんが「受けた恩は十倍にして返さないと気が済まない」みたいな価値観で主人公に「恩を返すまでは絶対に離れない」と同行して、その間に仲良くなるとか。でもそれを台詞一行で済ませると急に薄っぺらくなるので難しいですけど。
要約すると人と人が近しい関係になるにはある程度のステップがないと違和感がある(と私は思う)、という話でした。
なお、「お前の小説(もしくは他の特定の小説について)の登場人物も主人公のアクセサリーになってるから」と思った方。それは書かないでおいてください。
キャラクターの人格・価値観について 今川幸乃 @y-imagawa
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