第155話 僅かな可能性に賭けて

 竜魔法で怯ませ、エルダーアークデーモンのスキをつき剣を振るう。エルダーアークデーモンの敵意が俺に移りミーアへの警戒が下がった。そこでミーアが両の手に持つ剣を突きさし振り下ろす。

 幾度となく繰り返すけれど、ダメージが通らない。アーセルを後ろにしないよう、街を背にしないようにだけ立ち回る。エルダーアークデーモンが魔法を放つ体勢をとった。エルダーアークデーモンの魔法は効果範囲が扇状に広がるため距離をとっても躱しにくい。むしろ距離を縮める。魔法を放つその瞬間だけを見極め、サイドステップで躱し、魔法を放ったスキをつき剣を振るう。まただ、刃がはじかれる。

「ミーア、どうだ」

「まだダメ。はじかれる」

「ファイアーデビルの時にちょっとだけ入ったんだ。あの感じをどうにかして……」

「あたしも、あったわ。あの時、剣から何かが入り込んできたような感じがして」

エルダーアークデーモンがその腕を振り上げ俺を狙っているのが分かる。ギリギリで躱し剣を振るう。ギロリと俺を睨むエルダーアークデーモン。そのスキを突きミーアの2刀が閃く。

 掴みかける度、するりと指の間から逃げる。そんなことを幾度となく繰り返す。麒麟はこの力、その半ばまでは生かせると言ったではないか。心の片隅に焦りが滲む。その心の綻びをエルダーアークデーモンの腕のひと振りに捕らえられた。とっさに剣を間に挟み直撃を避ける。それでも上位王種の膂力は抑え切れるものでは無く、俺は無様に吹き飛ばされた。

「フェイ」

ミーアの悲鳴が聞こえた気がする。気付いた時にはうつ伏せに地に伏せていた。頭を上げ周囲を見回すとアーセルが駆け寄ってくるのが見えた。意識が飛んでいたのは数秒程度のようだ。ぐらつく視界に耐え膝立ちに立ち上がる。歯を食いしばり今の衝撃にも手放さなかった剣を握りしめる。俯くな顔を上げろ、脅えるな剣を振るえ、苦痛の声を上げるくらいなら魔法を放て、今の俺は勇者、世界を救うものだ。ふっと暖かいものを感じ、身体に力が戻る。見ればアーセルが泣きそうになりながら治癒魔法を掛けてくれている。まだ立てる、まだ剣を振るえる。ならまだ負けていない。

「アーセルありがとう」

一言礼を告げ、再度駆け出す。オレもミーアもエルダーアークデーモンの腕に幾度となく地に打ち倒された。そのたびにアーセルの治癒魔法が俺たちを立ち上がらせる。

「まだまだあ」

叫びながら切りつける。エルダーアークデーモンの敵意は完全に俺に来ている。大胆にそれでいて慎重に間合いをはかる。俺が剣を振るい切りつける。続けてミーアが切りつけ、その時エルダーアークデーモンがいきなり暴れた。その巨大な腕がランダムに振るわれ、足が地をける。その一つがミーアをまともに捉えた。今のは、まずいガードが間に合っていなかった。

「ミーア」

空を飛び何度もバウンドしたミーアが地に伏せる。今エルダーアークデーモンがミーアを襲ったら、その想いに必死に剣を振るう。

「ミーアの事は任せて」

アーセルがミーアに駆け寄り治癒魔法で傷を癒しているのを確認してホッとする。それと同時に怒りがこみ上げる。

「俺のミーアに何しやがる」

無我夢中で振るった剣から何かが……





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幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

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中高生の甘酸っぱい初恋を……

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