第121話 上位魔獣のスタンピード
不可視の刃が魔獣を蹂躙する。人の魔法の常識を超える竜の魔法は意識的に抑制をしなければ複数の上位魔獣を簡単に切り裂く。そしてそんな魔法を放てば当然……
「来たね」
「うん」
スタンピードの魔獣の敵意が一気に僕たち2人に集中する。その敵意の集中する中、魔獣が動き始める前に僕たちは更に加速する。ミーアがもつ右手の片手剣が閃き一番近くにいた魔獣の首を落とす。僕は、右手のブロードソードでその隣の魔獣の体を上下に分かつ。魔獣の目が赤く光り更に敵意が僕たちに集中する。ミーアはいつも通りに両の手に持つ片手剣をそれぞれを別の生き物のようにあやつり切り伏せる。僕も右手のブロードソード、左手のハンド・アンド・ハーフソードで魔獣を屠る。僕たちの持つオリハルコンソードが金色の燐光を引き、そのたびに1体2体、次々と魔獣を倒す。脇を抜けそうな魔獣には竜の魔法を放つ。魔力の消耗を抑えるため小さめに放った魔法でも上位魔獣1体程度であれば打ち倒す。それがまた敵意を煽り更に魔獣は僕たちに向かってくる。
剣で切り伏せる、魔法で打ち倒す。今の僕たちにとっては上位魔獣でさえ敵ではなくなっている。それにしてもスタンピードの初期から上位魔獣ばかりが溢れてくるのはさすがに異常に思える。
「ミーア、さすがにこれはおかしく無いかな」
「うん、最初から上位魔獣ばかり、しかも今倒したのは深層のさらに奥にしかいな新種よね」
「この辺りの魔獣なら僕たちにとっては、油断さえしなければなんということもないけれど」
「地竜とかグラントータスあたりが出てくると面倒よね」
「うん。もう負けることは無いだろうけど、討伐にどのくらいの時間が掛かるか」
「グラントータスあたりだと、さすがに1撃は無理な気がするものね」
「でも、今の僕たちなら多分甲羅も切り裂けるんじゃないかな。それにサイズがサイズだからそんなに慌てなくても……」
「フェイ、忘れてない。グラントータスって前への突進は凄く速いの」
「ああ、そうだった」
それでも、雑談をする余裕があった。この時は……
地を覆いつくすかのようなグラントータス、アースドラゴン、そして空にはワイバーン。ワイバーンもアースドラゴンと同様に亜竜。ただ、空を飛ぶため討伐難易度はアースドラゴンよりも高い。僕は両手剣に持ち替えアースドラゴンの首を落とし、グラントータスの甲羅を割る。僅かなタイミングをつかみワイバーンに魔法を放つ。ミーアもウィンドドラゴンの祝福により強化された剣技でアースドラゴンを1刀のもとに打ち倒し、ワイバーンを魔法で撃ち落としている。それでもさすがに片手剣の2刀持ちではグラントータスの甲羅を1撃では割り切れない。
「ミーア、グラントータスは僕にまかせて、ミーアはアースドラゴンとワイバーンだけを狙って……」
そこにアースドラゴンの尻尾が僕にむかってぶつけられてきた。探知のおかげで気づけたので咄嗟に両手剣を差し出し盾にしたけれど、体重差で吹き飛ばされてしまった。ウィンドドラゴンの祝福で強化された身体はこの程度では大きなダメージは受けないけれど、ミーアと離されてしまったのが痛い。
「ミーア」
地を転がった体勢から片膝立ちになり思わず叫んだ。もちろん探知にミーアは確認できている。僕は50メルド近く飛ばされたようだ。そんな僕をめがけてアースドラゴンが巨大な前足を振り上げ踏みつけてくる。とっさに横に転がり潰されることを避けた。急いで立ち上がり飛ばされても手放すことのなかった両手剣を振るいアースドラゴンの首を落とす。ミーアとの間にいる魔獣は3、4、5体。一気に駆ける。魔獣が僕の前を遮るたび両手剣を振るい切り伏せる。ミーアがチラりと僕を見て
「フェイ大丈夫」
「ああ、大丈夫。ちょっと油断した。さ、続けよう」
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