マッチ売り女と紳士
/*登場人物:マッチ売りの若い女(以下、女) 紳士/
/*女はあくまでも幸薄い感じで健気に、途中からちょっと頭がおかしな感じ。紳士は品よく善良そうに/
女「マッチ……マッチはいりませんか?」
女「マッチがご
女「どうか、マッチを買ってくださいませんか?」
女「ああ……誰も買ってくれないわ……どうしよう」
紳士「どうしたんだね、お嬢ちゃん」
女「マッチを売ってるんです」
紳士「マッチねえ……売れるかい?」
女「いいえ、ちっとも……あの、おじさん、マッチ買ってくださいませんか?」
紳士「ごめんね、おじさんチャッカマン持ってるから」
女「そうなんですよね……皆さんチャッカマン持ってるっておっしゃるんです」
紳士「……売れなかったら、親御さんに叱られるのかい?」
女「いいえ、うちの親は私の好きなことをやらせてくれます」
紳士「病気のご家族のためにお金がいるとか?」
女「いえ、みんな健康で、年に二回海外旅行とかに行ったりしてます」
紳士「それなのになぜ、あえてマッチを売り続けるのかね」
女「私、マッチが好きなんです」
紳士「へえ? 珍しいね、マッチが好きだなんて」
女「あのフォルムが好きなんです。素晴らしいでしょう?」
紳士「そうかなあ」
女「先が赤くて、太くなってて」(うっとりした調子で)
紳士「そのどこがいいのかよくわからないなあ」
女「こう……擦ると、熱くなって……火を噴くんです。すてき」(うっとりした調子で)
紳士「……??」(困った感じでちょっと唸る)
女「チャッカマンにはロマンがないわ! 先っちょが全然ダメ! みんな、マッチのよさをわかってないのよ!」(いきなり喚く)
女「だから、こうやってマッチのよさを布教してるんです」(いきなり健気な調子に戻る)
紳士「なるほどね」(少々逃げ腰で)
女「おじさん、おじさんだってマッチのよさをわかってるはずよ……だってそこに一本、野太いマッチ持ってるでしょう?」(うっとりした調子で)
紳士「指差さないで! マッチとか持ってないから!」
女「じゃあ、チャッカマンタイプなのね……まあそれも一つの個性だわ。個性ってホント便利な言葉よね」(いきなり見下した態度)
紳士「やめて! そういうの、ほんとやめて」
女「悩んでるなら手術でなんとかなるわよ。男性美容整形外科のパンフ持ってるけど、いる?」
/*もし可能ならSE: パンフの紙の音と革靴で走り去る音/
女「あ、逃げた」
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