ホラー

春の野を這う


*登場人物(どちらも名前は任意。年齢・言い回しは変更可)

 飼い主(◇)・・・男性。年齢任意。やさしい。

 犬(○)・・・人間でいえば小~中学生の女子。テンション高め。


*以下本文


犬「(何か咥えてハアハア走ってきて、口から出して逃げないように前肢で抑えながら、興奮している様子で)◇さま! これ、○が捕まえたのですよ! わん! わん!」


飼い主「何だこれ……これ……どこにいたんだ」


犬「道端の、ちっちゃいお花がいっぱいのところなのです。◇さまは、これが何だか知っていますか? ○はこれが何だか知っていませんが、かわいーいのですよ!」


飼い主「かわいい……かな」


犬「おうちに連れて行きましょう! ○はこれでたくさん遊ぶのです!」


飼い主「うーん……それはあまりよくないなあ」


犬「きゅうぅ」


飼い主「○、これはちゃんとおうちもあってお友達もいるから、放してあげなさい」


犬「えっ? でも◇さま、○がせっかく捕まえたのですよ」


飼い主「元いたところへ連れて行ってあげなさい」


犬「でも○が……」


飼い主「○も、誰かに捕まえられておうちに帰れなくなったらつらいだろう? こいつは帰してあげよう」


犬「……きゅうぅ」


飼い主「ちゃんと放してあげたかい?」


犬「(悲しそうに)はい……かわいーいのは、おうちに帰ってしまったのです」


主「えらいぞ。帰りにお寺に寄ろうな」


犬「わぁい! ○はお寺大好きなのです。おぼーさんがとっても優しいのです! わん!わん!」


飼い主「よし、行こう」


間。


飼い主「(呻くように)何だ……何なんだ、あれは……人間の手首……たしかに手首だった……でもめちゃくちゃに動いていた……何だったんだ……あんなものを見てしまった後、このまま家に帰るなんて、俺には無理だ……」


――終劇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る