新米聖女は乳を揉ませて世界を救う
河豚山雅春
プロロ-グ1 招かれた一般成人大学生
大学の前期が終わって夏季休暇に入った頃、大学生の智弁一茶(ちべんいっさ)はバイト先の先輩とバイクで山道を走っていた。
二人は住んでる地域から片道2時間程の有名餃子店の名物「にんにくマシマシジャンボ餃子」を食べに行った帰り道だった。
夕方の空いた山道を、先輩の運転するバイクに一茶が二人乗りする形で爆走していた。
「先輩!スピード出すぎじゃないですか!?メットにあたったコガネムシ弾けたんですけど!」
「悪い一茶、次のパーキングまでだからしっかりつかまってろよ!」
言われるまでもなく一茶は先輩にしがみつく形で乗っていた、一茶にとってバイクの2人乗りは今回が初めてだった。行きは怖かったのだが、帰り道になる頃にはもうすっかり慣れていた。
やや下り坂の直線道路、先輩はアクセルを回しながらどんどん速度を上げていく。
「そんなに急いでどうしたんです?トイレですか?」
「ああ、急に来た、パーキングどのくらい先にあるっけ?」
「ええーっと、確かこの先のダム越えたとこにコンビニありましたっけ」
「まじかよ、結構掛かるな~、漏らしたらすまん」
「ちょっと!ケツ当てないでくださいよ!」
先輩はふざけて尻を一茶へ向けて動かした。
動かす余裕があるなら言うほど限界ではないのだろう、一茶は先輩の背中を軽く叩くと先輩は笑ってコンビニを目指した。
「一茶、あの餃子ニンニクの量半端ねえわ」
「うまかったっすね、ニンニクジャンボマシマシ餃子」
「だろ?店長からジャンボマシマシニンニク餃子がうまいから絶対食えって教えられたんだよな」
「あれ、ニンニクジャンボマシマシ餃子?なんだか名前が覚えにくいっすね」
「なんだっけ?ジャンボって最初についてたっけ?覚えてねぇわ」
バイクはダムの近くに来ていた。更にスピードを上げたため、残像のせいですぐ隣の草木が緑色に塗りつぶされたかのようになっている。
「やべえ、出る!出していい?」
「だめです!」
「おまっ!ぎゅってすんな!ガチのやつだから!」
「え?」
バイクの大きなエンジン音の中に、異質なボボボという重低音が聞こえた。ちょうど先輩の尻辺りからである。
ボボボという音の正体は放屁だった、昼間に食べたニンニクの成分たっぷりのジャンボな一発が放たれたのだ。
その臭気は、ゼロ距離で直撃を受けた一茶の手を緩ませた。
「くっせええええええええ!」
「ばか!手ぇゆるめんな!それとごめんなさい」
そう先輩が叫んだときにはすでに急カーブに差し掛かっていた。
一茶がそれに気がついた時、すでに体は空中にあった。
ヘルメットの中にはまだ先輩の腸内でブレンドされた最悪のガスが残っていた。
「わああああああ!!!!おえっ!」
一茶はガードレールを大きく飛び越え、ダムの放水先の深い溝に落ちていった。
小学校の記憶から今までの記憶が一気に駆け巡る。
好きな子が自分の下駄箱に何か入れたのを目撃してドキドキした小学生時代
結局それは彼女が給食で食べきれなかったパンだったこと。今まで入ってた謎のパンはお前の仕業だったことを知った夕方の昇降口。
中学にして初めて後輩女子に呼び出されてワクワクしながら校舎裏に向かったあの感覚も甦る。
結局ただの学校清掃に駆り出されただけだったけど。ちなみに俺が委員会の清掃の予定を忘れてたから後輩女子が呼んできてくれたのだった。
高校生になって突然筋トレにはまってみたり絵を始めてみたりと自分の能力を開発してたのもつい昨日のことに思える。
唯一しっくり来たのは歌ってみたの歌い手活動だった、それがクラスのやつにばらされてあだ名がハウザーになったのも懐かしい。
その後ばらした犯人であるタケちゃんの下駄箱に行って靴がパンパンになるまで十円玉突っ込んでやった。
大学生になったら彼女とかできて薔薇色のキャンパスライフを謳歌できる、そんな淡い期待もしてたのだが。
「はあ、女の胸揉んでみたかったなぁ」
短い人生の走馬灯も終わりやがて嫌な浮遊感が襲ったかと思うと頭から溝に落下していった。
ダムの放水は相変わらずの水煙を上げていた。
「一茶ぁ!」
先輩も動揺のあまり、バイク操作を誤って対向車線にはみ出してしまった。しかも運の悪いことに、対向側から軽トラックが来ていた。
「あ」
トラックのクラクションが鳴る
鳴らしても避けられないはずなのに鳴らす意味あんのかな?そう感じる余裕は生への諦めが成せるものだからだろうか?
先輩は、軽トラックに弾き飛ばされ、ダムの底へ落ちていった。
後日、二人の大学生が山道で事故にあったことは新聞によって報じられた。
”山道走行の二人組大学生、軽トラに衝突、ダム底へ落下か”
大学1年生 智弁 一茶(ちべん いっさ) 21才
大学3年生 織河 五香(おりかわ いつか)22才
現在二人の遺体は
発見されておらず遺体の捜索が続いている。
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