第213章 はだかの王様を笑う賢い国民

 『はだかの王様』を笑うのは、とても賢い国民です。

 そのことに気づいていた王様は、自分と似た友達を探していたのでしょう。

 そして、出会ってしまった、賢くはない、あの少年。






テツガクちゃん

 気づいてしまいました! 私!

 『はだかの王様』に登場する国民は、とても賢い国民だったことに。


 賢い人にしか見えない布。

 それが、国民には見えていたんだと思います。

 それは恐れだったり、煩わしさだったり。

 そういう関わりたくない空気が、はっきりと見えていたのだと思います。

 

 もし、賢くない国民ならこう言うでしょう。

 「王様、風邪をひきますよ」と。

 あるいは、「裸でどうしたんですか? 王様」と冗談を言ったり。

 余計なお世話をしていると思います。



肯定

 たしかにね。

 そういう意味では王様の予想通り、国民はとても賢かったんだね。


 賢い人にしか見えない布。

 それが見えていたから、何も言わずにいた。


 心配の欠片も冗談の欠片も持たない。

 とても賢い国民だから、自分の本心を隠しながら、王様を遠くで笑えた。

 

 きっと、王様もそのことに気づいていたんだろうね。



テツガクちゃん

 そのことに気づいている王様だから。

 あのようなことをしたのかもしれません。


 賢い国民の中から、自分と同じ気持ちを持つ友達を探すために。

 予想外の出会い方を求めて。


 そして現れた、同じ気持ちを持った、あの少年。

 本心を隠す賢さを持っていない、あの少年です。


 類が友を呼ぶように出会った友達。


 関わりたくない空気より、関わりたい光に導かれる。

 飛んで火に入る、賢い無視ではない何か。



肯定

 面白い景色だね。


 賢い無視ではない何か……。

 無視するのが賢いことなんだけど、それができずに灯に飛び込んでしまう。

 そんな本心を表した言葉かな?



テツガクちゃん

 さすが、肯定さんです。

 今、私と同じ景色を共感しましたね!


 そうなんです。

 無視することが賢いことですが、灯に飛び込んでしまう。

 それは、余計なお世話なのかもしれませんが。

 本心に従い、灯りに飛び込んでしまう。


 私はそんな賢くない人です。

 肯定さんはどうなのか。

 それは、わかりませんが。

 同じ景色を共に感じられる、今とは出会いました。

 

 あなたはどちらになりたいですか?

 賢い人ですか? それとも賢くない人ですか?


 私は断然、賢くない人です。

 このままずっと、永遠に。





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それでは、また次の機会にお会いしましょう。




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