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ひつじ

深海

息が詰まるような毎日に今日も溺れた。

そんな風に語る自己愛ばかりが毎晩大きくなっていて、

言い訳は工業排水の油みたいに水面を覆いつくしている。


たぶん本当は、何も愛していません。自分以外。

汚したドブ川を必死にさらっても、

空っぽのやり取りだけしかないのなら、結局なにもすくえない。


大海を目指した蛙は死んだ。だけどなぜか僕は海に浮かんでいた。

沈みたいと願うたび、本当は沈みたくないと知って、

息を吸って止めて、自分のことばかり守った。


いつか、君がいない夜へ、潜って深くなったなら、

過去とか感情とかの死骸がきらきらして、雪のように舞っているそこで、

わずかに残った息を絞って、「ざまあみろ」って叫びたい。

泡になったそれが水面を震わすだけのこと。

それだけのために息を捨てたい。


(2020.02.18)

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