第5話 Lv2

「れん…蓮!」


「!すまない、少しボーッとしてた。」


「気をつけろよ、今回はLv2と戦闘になる可能性もあるんだ。」


「ああ、気をつけるよ。」


蓮は改めて気を引き締め、バイクに跨り目的地に走らせる。

道中、Lv1の憎魔を異能で蹴散らしながら進んでいった。どの敵も何かに押しつぶされたような死に方をしている。

そうして、廃墟が立ち並ぶゴースタウンに着いた。


「さて、そろそろ目的地付近だな、どの建物だ?翔」

マイクのスピーカー越しに翔が答える。


「そのまま200m前方に見えるひときわ大きい円形の建物がそうだ。その地下1階にある研究所から憎魔の生態調査に関する資料を持ちだして欲しい。ディスクの他に紙の資料もあると望ましいとの事だ。」


「OK。すぐ回収にむかう。」

建物の前にたどり着き、扉を開ける。


「さて、地下1階につながる階段を探すか。」

そうして研究室らしき部屋の前までたどり着いた。しかし扉が開かない、ロックがかかっている。もちろん電力など通っていないので、開ける術などないが。


「仕方ない。少し強引にいくか」

蓮が扉に手をふれ異能を発する。するとギィィィと軋む音が鳴り、ガンッッ!!

取手がひしゃげ無理やりこじ開けた。


「これで入れるな。データがすぐ見つかればいいが…見たところどれも憎魔に関する資料ばかりだな。探し出すのも面倒だし、全部頂いて帰るか。」

蓮は大きな鞄にデータと紙の資料を詰め込んでいく。


「よし、帰るか。」

来た道を帰り、研究所の外に出る。


「翔、資料は手に入れた。今から帰還する。」


「了解。特に問題はなかったか?」


「資料はあるだけ頂いた。問題はな…」


その時、犬型の憎魔が凄まじいスピードで蓮に飛びかかってきた。普通の人間であれば一瞬で噛み殺されただろう。

しかし、蓮の強烈な右足が憎魔の頭を正確に捉えた。蹴り飛ばされた憎魔は壁に叩きつけられ動かなくなった。蓮が辺りを見渡すと、およそ10近くのLv1の憎魔がいる。そして一際大きな個体が1匹、Lv2の憎魔だ。


「翔、問題発生だ。囲まれた。Lv2が1匹混ざっている。」


「やはり出たか。目撃情報は正かった訳か。」


「だな。だがまぁ問題ない。すぐに片付ける。」


蓮は荷物を降ろし、手のひらサイズの四角い金属体を取り出した。


「クロユリ起動。戦術1号」

すると金属体は宙に浮き、バラバラになる。中心に青の球体が現れそれを中心に金属片がゆっくりと公転する。


「マスターヲショウニン、イチゴウヲカイシシマス」

機械的な声が球体から聞こえると、金属片が次々と集まり出し形を作り出していく。すると一瞬で刀が形成された。接続面がある機械的な刀だ。刀を手に取り蓮は構える。


警戒していた憎魔が唸り声をあげ一斉に襲ってきた。蓮はそれを的確に躱しながら一太刀で次々と首を飛ばしていく。あっという間にLv1の憎魔が全滅した。


「能力を使うまでもない、あとはお前だけだな」


Lv2の象ほどの大きさもある虎のような憎魔を見て呟いた。

Lv2は最大限の警戒をし、大きな叫び声を発しその異能を発現する。頭上に大きな炎の塊ができ、そこから次々と火の玉が発射される。それを躱し切り払い憎魔に近づく。


肉薄し、刀を振り上げた瞬間...


「ガアアアアアアアア!!」

咆哮とともに頭上の炎が爆発し、その爆炎が周辺を焼き尽くす。

憎魔は勝利を確信したが、目の前に左手を掲げた無傷の蓮が立っていた。動揺した憎魔をよそに、蓮は攻撃を加える。


「潰れろ」

瞬間、憎魔を中心に地面が陥没し轟音を立て地面に激突する。


まるで大質量の物体が空から落ちてきたような衝撃が周りを包む。

蓮は歩きながら憎魔に近づいていく。


「まだ生きているとはな。さすがにLv2ともなるとしぶとい。」


たしかに憎魔は生きてはいるが、両手足が潰れ全身から血を流しており、もはや満身創痍だ。


「今度こそ終わりだ。」


刀に異能の力を込め、高速で振り下ろし首を飛ばす。こうしてLv2の憎魔は息絶えた。

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