第3話 憎魔研究者

蓮は町の裏路地に佇む、怪しげな雰囲気を出す一軒家の前たどり着いた。

そして、少しため息をつきながら扉を開けた。


「相変わらず悪趣味な家だ。」


つぶやくと、女性の声が部屋の奥から聞こえた。


「やぁ蓮、さっそく来てくれたんだね。」


白衣を身に着けた、ミニスカートの女が現れた。

女性の名は【古海京火ふるみきょうか】。

赤く染まった腰まで伸びる髪が目を引く。


「それで、今回は何の用だ?京火」


「まぁそう焦るな、少し座って話そうじゃないか。」


「手短にしろよ。」


蓮は椅子に腰掛けた。


「なに、また新しい憎魔のサンプルが欲しいのだよ。」


彼女は憎魔の研究者・スペリオルの開発者である。

憎魔の生体を調査し、未だ未知の部分が多い奴らの解析を行っている。


「この前渡したばかりだろ」


「今新しい武器の開発中でね。数が欲しいんだ。」


それに…と彼女は呟き、

「楽しくてしょうがないんだ、私は。」

顔を少し赤らめて、恍惚とした表情で話し出した。


そう、蓮があまり来たくなかった理由がこれである。彼女は研究対象に異常な興奮を示す。


そんな彼女がチラッとこちらを振り向き、

「なぁ、蓮。そろそろその身体を調べさせてくれよ。なんなら私の身体を好きにしていいからさぁ。」


蓮の身体は普通の人間とは違った「特別製」なのだが、頻繁にこうやって言い寄ってくる。詰まる所この女は、目的の為なら自分の身体も平気で差し出す変態なのだ。

「断る。お前を相手にするくらいなら風俗にでも行った方がマシだ」


すると、泣き真似をしながら上目遣いで

「ひどいじゃないか、私の様な美人をつかまえてそんな言い草なんて。」


たしかに客観的に見ても京火は美人の部類に入るだろう。モデル並みの体型。

顔も凛とした面持ちで、10人中9人は美人というくらいには顔も整っている。

しかし、その本性を知っているため彼女に欲情する事は微塵もないのだが。


「もうそろそろ本題に入れ」


「むぅ、つれないなぁ」

そう愚痴をこぼしながら、5本の注射器のような機械を渡してきた。


「今回は5体分頼むよ。できればLv2以上が望ましいな。」


「Lv2以上を5体分?また随分と無茶苦茶な依頼だな。俺じゃなかったら即断られる依頼だぞ。」


「でも君は受けてくれるだろう?なら何も問題ないじゃないか!」


「お前もお偉いさんから何か依頼されているのか?」


すると京火は真面目な表情になり

「蓮も知っているだろう?最近の憎魔の出現率の高さを。それにLv2以上も割と頻繁に目撃されるようになってきた。」


「なるほど、つまり上は強力なスペリオルを御所望ということか。」


「そういうことだ。まぁ私は基本的に自分の好きなようにするが、多額の開発費を貰ってしまった以上、無碍にも出来ないのさ。」


一拍置いて、京火は何かを思い出したように言い出した

「そうだ!ちょうど良い、試作品を作ったのだが、よければ性能を確かめてくれないか?」


そう言って出してきたのは腕輪型のスペリオルだった。

「これは使用者の異能を強化できる腕輪なのだ!闘うついでに使用感などを確かめてきてくれ。気に入ったならそのまま使ってくれても構わない。私はデータさえ取れればいいのでな。」


「了解。ではありがたく使わせてもらう。話はこれで終わりか?そろそろ俺はいくぞ」


「帰ってくるのを楽しみにしているよ」


蓮は目配せして外に出た。先ほど京火に渡されたカルマを腕に装着し、依頼に向かった。

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