再会


あれからしばらく普段の生活が続いたが、勉強には全く身が入らなかった。


それもそのはず、突然現れて突然いなくなったかのに不可解なジグソーパズル。

おかしなことが立て続けに起こり、たけるの頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。

学校から帰った僕はベッドで横になって悩んでいた。


「どうしよう…」


もうすぐ夏休み、ここで頑張らないと志望校に行くのは難しかった。


「かの…」


かののことはずっと考えないようにしていたが、ふとあの時のことを思い出してしまった。

どこから来たんだろう…。

現れ方や消え方、あれは人間じゃない可能性が高い。

でもそんなことってありえるのか。

その場合幽霊?…妖怪?…でも夢だった可能性もある。

ん?妖怪…?


その時ドアをノックする音が聞こえた。

(ご飯ができたのかな?)


「はーい」


しかし、ドアを開けたのはかのだった。


「や、やあ」


少し怖くなってしまった。かのは人間じゃないと今確信してしまったからだ。

母親がこんな時間に子どもを家に入れるはずがない。

会いたいと思っていたはずなのに、今は逃げ出したい気分だ。


「私が怖い?」


そう言うとまた部屋に座り込み読書を始める


「…何しに来たの?」


恐る恐るそう聞くと、かのは答えた


「たけるが私の事呼んだ」


「僕が?」


僕はかのの名前を呟いただけだが、それを呼んだと解釈したようだ。


「呼んでないなら帰る」


返事が悪かったのか、かのは不機嫌そうにしている。


「呼んだ!呼んだよ!」


僕は焦ってかのを引き止めた。

怖かったがここで帰られてしまったらまたかののことで悩んでしまう。

少し間があり、たけるがたまらず口を開く。


「質問してもいいかな?」


「答えるかはわからない」

かのは本を見つめたままそう答えた。


「かのはどこから来たの?」


「この家のすぐ近く」


「…かのは人間なの?」


「違う」


「じゃあ、幽霊?…それとも妖怪?」


「その質問、とても失礼ね」


どうして失礼なのかはよくわからなかったが僕は謝るしかできなかった。


「…ごめん」


「人ではないけど、幽霊でも妖怪でもないわ」


「…何者なの?」


「答えられない」


「かのはどうしてあの日、僕の部屋に来たの?」


「理由なんてない」


どうしよう…謎がほとんど消化されない…

そういえばかのは前回も読書をしていた。


「何を読んでるの?」


「何も読んでない」


しかしかのは本を見つめている。読んでいるじゃないか。

そう思い恐る恐る本をのぞき込むと、かのの手元の本には何も書かれていなかった。

ページが真っ白だったのだ。


「どうしてこれを見ているの?」


「…」


何かまずいことを言ったのか、かのは黙り込んでしまった。



「ご飯できたわよー!」


最悪だ、このタイミングでご飯に呼ばれてしまった。



「かの、僕がご飯から帰ってくるまでここにいて」


しかしかのは返事をしない。


「はやくしなさーい」


「今行くー!かの、この部屋からでないでね」


僕は部屋を出て食卓へ向かった。


「遅かったわね、なにかしてたの?」


「あー、パズルに夢中になってた」


「もー、少しは勉強しなさいよ」


「はーい」

(早く食事をすませて戻らなきゃ)


「ごちそうさま!」


大急ぎでご飯を食べ、部屋に戻った。


(お願い、部屋にいて…かの…!)


その願いも虚しく、既にかのの姿はなかった。

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