第9話 令和弐年の二月二十六日は『籠の中の鳥』でファンタジー④
「馬を繋いでくる。二人は街で案内板を見ておいてくれ。」
漁村の入口につくと、馬を繋いでおく止まり木に縄を通して、ポーリーは胸元から紙巻きたばこを取り出した。火をつけると一服を始める。
入口には止まり木があり、馬が止められるようになっていた。ポーリーはその傍らでゆったりと煙草を吹かす。人の姿はほとんど見えないが、当然だ。層のせいで、誰もが離れて暮らしている。家族でも、親子でも例外なくだ。一軒ごとの距離は広く取られ、その代わりに案内板があり、どこに誰が住んでいるか書かれている。
「もともとは鳥学者さん……よね。」
シエラは目的地を確認する。行商人はこの家一軒ずつ、ぐるっと回り小麦を届けるのだ。もちろん、預かった手紙と、そしてチルバードを預かってもらうことが最後の目的地になる。もともと預かった山村では、伝承ばかりが先立っていて、妙な想像や憶測ばかりが広がる。そういった人の想像や憶測を掻き立てるものが忌避されることは、言うまでもないだろう。そこに対応するのは、正しい知識しかない。
「行こうか。案内は任せたよ」
ポーリーがシエラの脇に来ている。煙草に満足したようで、いつも以上にぼんやりとした表情だ。自分で案内板を見ることもなく、シエラについてゆっくりと馬車に乗り込んだ。
そこからは機械的だ。シエラの覚えた道に沿って、ポーリーが馬車を進める。そして三人で荷物を下ろす。戸を叩く度、大方笑顔で迎えられた。やはり人と会いづらい環境では、誰もが人恋しくなるものなのか。たまの訪問者として感謝をされることが多い。しかし、シエラだけは一歩引いて、その様子を眺めていた。
一通り回って最後、鳥学者の老人の家へと到着した。
*明日*
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