第7話 令和弐年の二月二十四日は『籠の中の鳥』でファンタジー②
「いま、鳴かなかった?」
シエラは立ち上がる。
「そうだね、鳴いたように聞こえたね。」
セイムは何事もなく答えた。チッチッチッと、セイムは鳥をあやすように、会話を試みる。言葉は発さないものの、その動きが『もう一度鳴いてごらん?』と言わんばかりだった。
「どんな風に鳴いたか聞こえた? 鳴き方で、どんな未来が来るか予言しているって話だったけど」
と、村で聞いたメモを見比べている。
「ピッと鳴いたかな。」
セイムは返事をしながらも、チッチッチッと続けている。シエラは紙をぺらぺらとめくる。
「短く強く鳴いた時は、不運の印。或いは強い変化の兆し――なんて曖昧」
言いかけた口をつぐんで、幌から外を覗いて外をぐるりと見まわす。チッと舌打ちをする。
「いつでも出られるように準備して。」
シエラは自身の腰丈もある長い杖を片手に幌馬車から降りる。外に出ると、先ほどまでの良い天気が嘘のように、雲が広がり空を覆う。ぽつぽつと雨粒が降ってくる。そして、後方道の彼方から、片腕を庇うように、片足を引きずりながら走ってくるダンの姿が見えた。
*続く*
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